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会社の若い同僚と年末の大掃除について話をしていたときの話です。

「スプレー缶を捨てる際、穴を開けずに捨てた 」とのこと。

「いやいや、何言ってんの!スプレー缶は穴をあけて捨てるのが常識でしょう~ まったく最近の若いもんはゴミ捨てのマナーも知らず困ったもんだ」と意見してやりました。

ところが無知だったのは私の方でした・・・
(-_-;)


スプレー缶の穴開け 確かに私が住んでいる市原市では穴を開ける必要があるのですが、彼が住んでいる 隣の千葉市では穴を開けないのが正解 だったんです。

つまり、
穴を開ける/開けない は自治体ごとに異なる
ということのようです。

2017年も暮れようとしたころ、スプレー缶廃棄に対する私の常識がガラガラと崩れました。

今回は、どういうことなんだ(# ゚Д゚)!というわけで、スプレー缶の穴開けについての最新事情 を調べてみました。

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スプレー缶の穴あけは実は危険な行為だった


中身が完全に空であれば、穴あけは危険な作業ではありませんが、中身が残っていると話は別です。

穴をあける際に 中身が入っていると、内容物が噴き出す可能性 があります。特に有毒なものであったり、目に入ったりすると重大なケガにつながりかねません。

また、残留ガスがある場合、爆発する恐れ があります。火気がない場所だからと油断してはいけません。穴をあける時に金属がこすれて発生する 火花 や、プラスチックなどで発生する 静電気 でも引火の可能性がありますから注意が必要です。



実際、以下のような事故例があります。

車の塗料スプレー缶の穴あけ:塗料が噴出して顔にかかって目にはいって救急車搬送。
2012年4月/80代男性

ガスコロンロに火がついているそばで消臭スプレーの穴あけ:内容物に引火してやけど。
2012年7月/60代女性

室内でのスプレー缶穴開け作業が原因と見られる火災が発生し、2名死亡。
2015年5月/札幌市

つまり、スプレー缶等の穴あけは、中身が完全に空であることなしでは安全が担保されない危険な行為 なのです。

環境省の指導

昔から、ゴミ回収時の火災や爆発等の事故を防止する観点から、スプレー缶等を廃棄する際には穴をあけることが求められてきました。

燃えるゴミ収集車
私もそれが常識だと思っていました。しかし常識は変わりつつあるようです。

現在では、消費者の事故防止の観点から、スプレー缶等を廃棄する際には、穴開けしない方向に舵がきられました。

近年、環境省では、エアゾール缶(スプレー缶)やカセットボンベを廃棄する際、穴開けしない方向が望ましいとする通達を自治体に向かって発しています。

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自治体によってルールが異なる

環境省の通達を受けて、一般消費者に対して「穴開けが必要」から「穴開けは不要」にシフトする自治体が増えてきました。

しかし、穴開け不要として収集するには、従来のゴミ収集車ではなくて別のトラックを用意したり、別の収集日を追加するなど、コスト増につながります。

各地域には様々な実情があります。なので一概には言えませんが、長い目で見れば、穴開け不要の自治体が増えていくのではないかと思われます。


以下に、政令指定都市および東京都23区について。各自治体の状況を調べてみました。

・2020年1月調べ(仙台市が近々変更される予定)
・2020年4月調べ(仙台市と神戸市が「不要」に)
・2021年6月調べ(岡山市が2021年4月から「不要」に)
・2022年7月現在↓
政令指定都市等 穴あけ メモ
札幌市 不要 2017年7月から変更。中身が見える別の袋に入れる事。
仙台市 不要 2020年3月から変更。
新潟市 不要 やむをえず中身が残っているもの:「中身入り」と表示して出せる
さいたま市 不要 やむをえず中身が残っているもの:「中身入り」と表示して出せる
東京23区 不要 穴開け不要は23区共通だが細かいルールは区によって異なる。
リンクは例として大田区のページに飛びます。
千葉市 不要 私(管理人)の同僚の地元。
市原市 私(管理人)の地元。政令指定都市ではないけど
川崎市 不要 やむをえず中身が残っているもの:「中身入り」と張り紙をして小物金属で出す
横浜市 不要 「スプレー缶の日」に出す
やむをえず中身が残っているもの:各区の収集事務所に相談
相模原市 週1回の資源の日にかん類として出す。
静岡市 不要 2016年4月から変更。月1回の資源ごみ(びん・缶)収集日に決められた集積所に出す
浜松市 不要 「スプレー缶の日」に出す
名古屋市 不要 2016年10月から変更。
やむをえず中身が残っているもの:区の環境事務所に問合せ
京都市 不要 小型金属類として出す
大阪市 不要 2017年4月から変更
中身の見える袋に入れ、資源ごみの日に資源ごみと分けて出す
堺市 不要 「スプレー缶」と貼り紙して小型金属の日【月一回】に出す
神戸市 不要 2020年4月から変更。「燃えないごみ」とは区別して「中身が見える袋」にいれて出す(月2回)
岡山市 不要 月2回、資源化物ステーションの緑コンテナに出す
広島市 不要 「資源ごみ」として出す
北九州市 不要 「かん・びん」として出さず、「家庭ごみ」として出す
福岡市 不要 2015年12月から変更。「燃えないごみ」の青い指定袋へ入れて出す
熊本市 不要 「特定品目」として出す(月2回)
(※ HP等で公表されている情報をまとめたものですので、メモ欄の記述内容が一律ではありませんがご容赦ください)


思ったより、「穴開け不要」が広まっている印象です。

ただし、これは政令指定都市や東京23区といった都市部での話です。人口の割に収集面積が広くコスト高となるような地域ではまた状況が違うかもしれません。

また、私の住んでいる市原市と、隣の千葉市のように、同じ都道府県内でも扱いが異なる場合があります。必ず、地元の自治体から配布されたチラシやホームページで詳細を確認するようにしてください。

「〇〇市 スプレー缶」 もしくは
「〇〇市 エアゾール缶」

といった形で検索すれば必要な情報が見つかると思います。

穴開けが「不要」だとしても必要なこと

穴開け不要/必要にかかわらず、いずれの自治体でも
中身を出し切る事
は必要であるというのは共通しています。

スプレー缶の中身を出し切るには

風通しがよく、火気がない戸外で、シューという音がしなくなるまで噴射ボタンを押します。

内容物が残っている場合(特に有害物質の場合)は、ゴミ袋の中に新聞紙やトイレットペーパーを入れ、その中に噴射します。

指先に内容物がかかるかもしれませんので、手袋をして行うと良いですね。


なお、ガスが先に抜けてしまったなどにより、中身がどうやっても抜き出せない場合もあり得ます。無理して穴でもあけようとすれば中身が噴射するかもしれませんので危険です。消防署もしくはクリーンセンター等にといあわせてみましょう。

中身の使い切りについて、よろしければ次の記事をご参考にしてみてください。



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シンプルな穴あけ方法

私が住んでいる市原市では「穴あけが必要」なので、廃棄する前に穴あけ処理をしなければなりません。

金づちで釘をたたいて穴をあけるのは、簡単ですが滑ったりすることもあるので、とても危険です。

私が普段行っている穴開けの方法は、とてもシンプル。手持ちのプライヤーを使います。たしかこれ、車載工具だったかな。ペンチでも良いと思います。

底面のフチのところにプライヤーをひっかけて、側面をギュッと締め付けるだけ。スプレー缶のほとんどはアルミなどの柔らかい金属でできていますので、簡単に穴があきます。
穴開け中
穴開け中

穴開け後
穴開け後


一方、ガスカートリッジ缶のようなスチール製ですと、この方法では握力のない方にはちょっと厳しいかも

そんな場合は無理せず、以下のような専用の穴あけグッズをお使いになった方が安全かと思います(ただ、針先は鋭利なので気を付けてくださいね)。



2018年12月19日 追記

2018年12月16日の日曜日、札幌でまたしてもスプレー缶がらみの不幸な事故が起きてしまいました。
被害にあわれた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。

全国ニュースでも多くの時間が割かれていましたし、本記事へのアクセスが急増したことからも、事故および対策に対する関心の高さがうかがえました。

しかしながら、一部報道やネット上のコメントを見ると、やや論点がズレている、もしくは視聴者・読者をミスリードする恐れがある内容も散見されました。

特に気になった点についてすこし追記させて頂きます。

■「札幌では缶に穴を空ける必要が無かったのに」
⇒自治体によってスプレー缶の廃棄の際の穴あけが必要/不要がまちまちなんですが、札幌市では不要とされています。で、それが周知されていたら事故が起きなかったといったという論調ですが、それはちょっと違うと思います。

基本的に、穴を空ける必要性の有無にかかわらず、中身を空にすることは消費者の責任とされています。ですから、廃棄するスプレー缶の中身を空にしようとしていた行為そのものは間違っていなかったのです。

今回の事故の根本的な過失原因は、「室内で」「大量の」廃棄処理をしたことであって、この際、穴を開ける/開けないは関係ありません。


■「除菌消臭スプレーが充満して爆発した」
⇒除菌消臭の薬剤成分の詳細は知りませんが、おそらく、爆発した成分としては、薬剤そのものではなく、薬剤を噴出させるためのガス(ジメチルエーテルなど)が原因だったと思われます。

「除菌消臭スプレーだから危険だ」ととらえるべきではありません。ノズルを押せば噴出し続けるタイプのスプレー缶は、ほとんどのものが可燃性の噴出ガスを含んでいるので、誤った処理をすれば爆発の危険がある という認識をすべきです。

追記は以上です。

まとめ

今回のポイントをまとめます。

  • スプレー缶の穴あけは実はけっこう危険な行為
  • 消費者保護の観点から、穴開け不要とする自治体が増加中
  • 穴開け不要としても、中身(ガス含む)を出し切ることは必要
  • 作業は必ず火気のない屋外で、少しずつ
  • どうしても中身が出せない場合は問合せを

一般市民の安全を確保するために、穴開け不要とする自治体が増えてきました。

一方、ゴミを収集する自治体としては、コスト増になりますし、ガスが残ったままのスプレー缶が廃棄されるというリスクを負うことになります。

東京都だけで、スプレー缶等の残存ガスが原因とみられる火災は平成24年では52件もありました。火災になると一台一千万近くするゴミ収集車が廃車になってしまうこともありますし、なによりも作業員さんの命にもかかわる危険もあります。

初心者そのような事故が起きないよう、ひとりひとり初心にかえり、ルールを守って正しくスプレー缶を廃棄するようにしましょう。


今回は以上です。最後までお読みくださり、ありがとうございました。





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