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リモコン三枚おろし もう10年近く使ってきたリビングの液晶テレビ(2011年製の東芝REGZA)のリモコンが故障しました。ある日突然に壊れたわけではなく、ジワジワと悪化してきた感じ。

具体的には、電源ボタンの反応が鈍くなり、ONでもOFFでも、5秒ほど長押ししないと効かないという状態になっちゃいました。

全く機能しないわけではないのですが、こういうのって地味~にストレス感じますねぇ。電源の入り切りぐらいだったらテレビ本体のスイッチでも操作できるのですが、リモコンに慣れた身にはこれもめんどくさい。


このレグザの純正リモコン(CT-90389)をネットで探してみますと、購入可能でした(例えばAmazonだと2020年の検索当時で2,342円)。

このストレスから逃れるためには買っちゃうのが手っ取り早いかな・・・とも考えましたが、セコイ性格の方が勝ちまして、今回は修理する方向で模索してみました。


で、結論から言うと、
自分で修理できて、見事に復活しました!

ボタンの感度が鈍って長押ししないと効かなくなったな~とお悩みの方は、とりあえずご一読を。

新しいリモコンをポチるのはそれからでも遅くありませんよ!


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考えられる故障要因

今回の場合、不具合があったのは電源ボタンだけで、幸いにも、他のボタンは特に問題ありませんでした

このことで、故障要因をだいぶ排除できますが、とりあえず、一般的なリモコン不具合でチェックすべき項目をひと通り挙げてみますと、

  • 要因① リモコンの電池不良
  • 要因② リモコンの設定の問題
  • 要因③ 液体がかかった?
  • 要因④ 受信側(テレビ本体)の問題
  • 要因⑤ 赤外線が出ているか?

まずは確認が簡単そうなものから詳しく見ていきましょう。

要因① リモコンの電池不良

電池は一番の「リモコン不具合あるある」ですが、他のボタンはちゃんと機能しますから、今回は電池が犯人じゃありません。

念のため、電池の接点が錆びていないことを確認の上、新しい電池に交換して試してみましたが、案の定、変化ありませんでした。

■ 一般にどんな不具合が考えられる?
  • 電池がへたった
  • プラスマイナスのいれ間違い
  • 電池の液漏れ等で接点がさびている
など

もし、電池の液漏れが起こってしまっていても、あきらめる必要はありません。ビニール手袋等をしてから、綿棒や紙やすり等で接点をきれいにします。最後に金属端子に接点復活剤などを付けておくと復活する確率が高くなりますよ。


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要因② リモコンの設定の問題

一般的に、複数台のテレビをそれぞれのリモコンで操作できるよう、テレビとリモコンには複数の「リモコンコード」が用意されています。

当然ながら、リモコンとテレビのコードが合っていないと、操作できません。それが何かの拍子で変わってしまう可能性が考えられます。

今回は他のボタンが使えることから、リモコンコードも問題ないはずです。

■ 一般にどんな不具合が考えられる?

リモコンコードは、初期設定のまま使われるケースがほとんどだと思うのですが、仮に設定を変更して使っていた場合、電池を抜いた時などに初期設置に戻ってしまうことがあるそうです。

全てのリモコンボタンが使えなかったなら、これも疑うべきポイントですね。

要因③ 液体がかかった?

コメント頂いた読者さんの事例ですが、とりあえずドライヤーで乾かしてみたら直ったとのこと。

想像ですが、何らかの液体がリモコンにかかったのかもしれないですね。自分じゃ身に覚えがなくても、ご家族の誰かが水かお茶などをこぼしちゃったけど、黙っていたのかもしれません。

思いがけない犯人として、赤ちゃんも考えられます。赤ちゃんって、リモコンが大好きだったりしますよね。目を離したすきによだれをベットリ・・・なんてこともあるかもしれません。

同様に、ペットのいたずらとか、オシッコとかも考えられます。

このケース、かかった液体が水だったら単純に乾けばOKだと思いますが、ジュースみたいなのだったら、糖分が残って後々問題を起こすかもしれません。その場合は、記事後半のような分解掃除が必要となるかもです。

このドライヤー作戦、簡単ですから、分解する前にとりあえず試してみる価値はあると思います。

要因④ 受信側(テレビ本体)の問題

原因はリモコンだけじゃなくて、テレビ本体側にある場合も考えられます。ですが、これも今回は他のボタンが使えてるわけですから、まあ、可能性は低いと判断しました。

もしあるとすれば、電源ON/OFFの機能のみ、テレビ側で正しく動かないということになりますが・・・正直、あまり考えたくないというのが本音です。とりあず、頭の隅っこに。

■ 一般にどんな不具合が考えられる?
  • 受光部の前に障害物がある
  • 別の強い光がリモコン受光部にあたっている
  • 本体の電源が「切」になっている
その他、お子さんがいるご家庭でしたら、受光部にシールなどを貼られることもあるかもしれませんね。知っててイタズラする確信犯も含めて。

要因⑤ 赤外線が出ているか?

テレビ等のリモコンの多くは赤外線で通信を行います。

リモコンの不具合の際、ぜひ確認しておくべきなのは、ボタンを押した時に赤外線がちゃんと出るかどうかです。これ、人間の目では直接見えないんですけど、スマホ(デジカメでもok)を使えば簡単に確認できるんですよ。

赤外線の送信部はリモコンの先頭にあります。スマホのカメラで見ると次の写真のように光るのが分かります(問題のないボタンを押した場合)。

リモコンの発光部
■ なぜリモコンの光は目では見えないけどスマホでなら見えるの?

人の目には可視領域があって、領域外の波長をもつ赤外線や紫外線を見ることができません。しかしスマホのカメラやデジカメで使われている画像センサーにはそうした可視領域の制約が無いので、光のエネルギーを受光すれば電気信号に変換されることになります。

その電気信号を可視光としてモニタ表示することで、人間は赤外線を「見る」ことができます。
(ただし、一部のスマホ、デジカメ、リモコンではこのような方法で光が見えない場合もあります)


実際に試したところ、問題のないボタンは押すとすぐ光るんですが、問題のある電源ボタンは、すぐには光らず、長押ししたら、やっと光ることが確認されました。
電源ボタン
やはり電源ボタンを押してもすぐには光らない…


というわけで、リモコンでの発光が異常(長押ししないと光らない)だと判りました。先ほど頭の隅にひっかかっていた、「受信側(テレビ本体)の問題」への疑いはとりあえず晴れたと考えてよさそうです。


これで真犯人はリモコンに絞られました。

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結局、ボタンの接触不良が最も疑わしい

たぶんこれが信号処理用のチップ

おそらくですが、リモコンでそれぞれの「ボタンが押された」という信号は共通の信号処理回路で処理されているはず。そうすると、電源ボタン以外は問題ないことから、信号処理回路には問題なく、電源ボタンまわりの不具合(配線の断線や接触不良など)が一番疑わしいと考えられます。

ただ、いつも同じように長くボタンを押しさえすれば必ず赤外線は光る(機能する)ことから、電線が切れているとか、ボタンのスイッチが壊れているみたいな単純な故障とはちょっと違うんじゃないかなという気もします。

これは中を開けて調べてみないと判らないので、分解してみることにしました。


※ 以下、分解してみた体験談になります。いったん分解してしまうと、メーカーの保証対象外となる可能性があることをご承知おきくださいね。

とりあえず分解してみた

分解に先立ちまして、不慮のショートを避けるため、まずは電池を外しておきます。

リモコンの電池を外す
外観をざっと見てみましたが、ビスのようなものは一切見当たりません。これはもう、はめ込みになってるんでしょう。こじ開ける以外になさそうです。

下手すればケースが破損して割れてしまう恐れもありますが、イザとなれば新規購入すればいいや、と覚悟の上、ツッコミどころを模索。

リモコン分解
どうにか、わずかなすき間にドライバーの先を突っ込んで、すき間を広げることに成功しました。

リモコン分解
全周にわたって慎重にパコパコと外していくと、フタを外すことができました。少しこじ開けたところが傷ついてしまいましたが、まあ、割れはしなかったので良しとします。


ボタンの部分って、全部連結しているんですね。一体型のゴムシートでできてました(下の三枚おろし写真の真ん中)。

リモコン三枚おろし

よく見ると液体みたいなものが…

よく見ると、ゴムシートの下のプリント基板の表面が濡れて光っているようです。

油脂が析出
なんだこれは・・・気持ち悪っ!

ということで、ネットで調べてみたところ、どうやらこれは人の手からでた油脂成分が析出したもののようです。しかも、これが接触不良の原因で、拭けば直りますよ、との先駆者たちのありがたい情報がありました。

確かに、電源ボタンのあたりが一番汚れているようです。他のボタンのところも汚れていたので、今は問題なくても、いずれ他のボタンも故障する運命だったのかもしれません。

それと、基板表面だけでなく、シリコンゴムシートの裏側にもべったりと油が付いていました。

修理(綿棒でのお掃除)

リモコン基板掃除 綿棒にアルコールを付け、基板表面と、ゴムシート裏面をきれいに掃除しました。どちらも電流が導通する部分ですので、キズつけないよう、やさしく。

ついでに、ゴムシート表面の、ボタン間の溝にもごみがだいぶ溜まっていましたので、こちらもきれいにしておきました。

ゴムシートの表も掃除 とりあえず再び組み立ててみて、電池を入れ、動作確認。

電源ボタンはかつての反応を取り戻し、サクサクと働くようになりました!!

今回の故障のメカニズム
-なぜ長押しすれば動いたのか?-

今回のリモコンの故障は、ネット上の先輩方の情報を頼りに解決に至りましたが、まだちょっと腑に落ちないところがあるので、さらに調べてみました。

ご興味がありましたら、もう少しお付き合いくださいね~

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リモコンボタンの構造

調べてみると、今どきの一般的なテレビリモコンの「ボタン」は横から見て次のような構造になっているようです。

リモコンボタンの構造
表面の一体型ゴムシート(絶縁性シリコンゴム)によって、押し下げるクリック感と、戻る動きが得られます。そしてゴムシートの裏面にはボタンごとに導電性シリコンゴムが付けられており、これがボタンの押し下げによって基板上の回路パターンの接点に触れて導通することで、ボタンの「ON」を検知するというわけです。

実際の基板上のパターンをよく見ると、迷路のコースみたいになっているところは、左右の電極が互いに折り重なるような形になってます。ここに何か導電性のものが触れるとこの電極間で電流が流れるんだろうなと推測されます。

一般に、基板表面の回路パターンは、レジストという絶縁性のある保護材で表面処理されます(下写真の下部の緑色の配線部分なんかがそう)。しかし、左右の電極部分などの表面は黒っぽくなっているので、レジストではなく何か導電性のあるもの(カーボンかな?)で表面処理されていると思われます。

リモコンボタンの電極

なぜ油脂が溜まったのか

シリコンゴムには、耐久性に優れているといったメリットの他、透過性が高いという特徴もあります。

これが油脂を通しやすいということにつながります。長い期間に渡ってボタンを押し続けた結果、指の油脂が導電性ゴム部と基板の間に析出したのでしょう。

故障のメカニズム

油脂による接触不良 もうお分かりと思いますが、この油が絶縁物として働いてしまったのですね。

一般に、油は絶縁性が高い物質です。これは水などと比べて電解しにくい性質があるためです。

ボタンを押し下げると、正常ならば導電性ゴムと基板上のパターンが接触して基板上の電極間に電流が流れるのですが、間に油膜がある場合、その絶縁性のため、電流が流れません。しばらく長押し続けていると、圧力がかかった部分の油が移動して、通電するようになったと考えられます。

なぜ電源ボタンだけ効きが悪い、反応が鈍くなったのかといえば、やはり一番使用頻度が高いボタンだからなんでしょうね。

スイッチにおけるその他の故障モードと修理方法

その他の故障モードとして、ボタン裏の導電性ゴムチップが欠落していたり、ボタン裏にゴムではなくて導電性塗料が使われていて、それが剥げている場合もありえます。

また、基板上の電極パターンの劣化も考えられます。

こうした場合には次のような修理方法(延命処置)があります。

伝導性ゴムチップの交換

なんと!導電性ゴムチップがAmazonで売られてましたよ。こんなのも手に入るなんて・・・Amazonおそるべし。

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導電性ゴムの代わりにアルミを貼る

簡易的に直す場合は、アルミテープ(100均とかにある)を小さく切って貼るか、アルミホイルを薄い両面テープか接着剤で貼り付けると良いそうです。

電極の導電パターンを鉛筆でなぞる

長く使っていると基板上の電極パターンが摩耗して導電性が落ちる場合もあります。こうなるとそろそろ寿命かとも思いますが、もう少し延命処置も試してみましょう。

アルミ等を貼るのは伝導性接着剤が必要になりますし、今回のような複雑なパターンになっている電極では、形状的に厳しいでしょう。

この場合、黒い電極パターンの上を鉛筆(黒鉛には伝導性があります)でなぞる方法が一定の効果が望めます。電極を傷つけないよう、柔らかくて濃い芯で優しくなぞってみます。

これでもダメなら導電性塗料かな、と思いますが、これは私も試していないし、失敗すると本当に息の根を止める恐れがあります。やるとしたら自己責任でお願いしますね…

おわりに

純正品の販売サイトのレビューを見ると、どうも同じような症状で買い替えた方が少なくないようです。すべてとは限らないでしょうが、同様のアプローチで修理できるケースも多いのではないでしょうか。


今回の場合は、長い期間をかけて溜まった油脂が原因だったと思われますが、ジュースなどをこぼしたりした場合は、短期間で同様の故障が起こるかもしれません。

対策としては、カバーとか、ラップを巻いておくということぐらいですかね。

しかしそれもうっとうしい。修理の方法は簡単だったし、次回も同じように直せそうなので、とりあえずこれからも普通に使っていこうかなと思います。


とりあえず、リモコンの故障が疑われる場合の対策としては、以下の修理方法を試してみてはいかがでしょう(一部、分解が必要になります)。

  • しばらく放置またはドライヤーで乾かす
  • 基板表面やボタン裏をアルコール等で清掃
  • 基板上の導電性パターンを鉛筆でなぞる
  • ボタン裏にアルミを貼る
  • ボタン裏の導電性ゴムチップを交換


今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

<後記>

最初に修理してからわずか1年ちょっとで、また少し電源ボタンの調子が悪くなってきました。

再び分解してみたところ、今回はまだ油が光って見えるほどベットリではなかったですが、やはり汚れていたようです。

前回と同様に綿棒にアルコールを含ませて清掃したら、しっかり復活してくれました。

左上の隅にあるのが電源ボタン


意外と短いスパンで調子が悪くなるもんだなと思いましたが、前回の清掃が完全じゃなかったのかもしれないし、寿命的なものもあるのかもしれませんね。
(↑2021年10月24日追記)

またまた、電源ボタンだけ調子が悪くなってきました。今回は清掃後でもちょっと反応がイマイチ。いよいよ、基板上の電極パターンが劣化してきたかなと思い、鉛筆(2B)で優しくなぞったところ、見事サクサク反応するようになりました。

でもまあ、鉛筆なんで、またすぐ劣化するかも。いずれは何か導電性の塗料でも塗るかな・・・
テレビ自体ももう11年。ずっとリビングのメイン機として使い続けていますが、なんとかリモコン君も添い遂げさせたいものです。
(↑2022年8月15日追記)

さらに月日が流れ・・・清掃と鉛筆のメンテを何度か繰り返しましたが、劣化するまでのサイクルが短くなり、いよいよどうにもならなくなってきました。相変わらず調子が悪いのは電源ボタンだけですけどね。

次の手段として、アルミ箔を両面テープで貼ってみました。貼った場所は、導電性ゴムの裏側。電極パターンに接触するところです。
アルミ箔と両面テープの厚いと、常に接触するかもと思って、ダイソーでできるだけ薄い両面テープを選びました。

結果、見事に復活しました!!どうやら、ヘタっていたのは電極パターンの方ではなくて、導電性ゴムの方だったみたいですね。まだまだ、リモコン君は元気に働いてくれそうです。
(↑2023年5月2日追記)

アルミ箔を貼ってから1年以上メンテなしです。
パリオリンピックも無事、乗り切ってくれました。
最初に修理してから4年以上経過しましたが、相変わらず、リモコン君は元気です!!
(↑2024年8月13日追記)



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