三千人に一人の割合で発症すると言われる
突発性難聴。
有名人、例えば KinkiKidsの堂本剛さんやサカナクションの山口一郎さん、浜崎あゆみさんやスガシカオさんなどが発病したことで、見聞きした人も多いかもしれません。
世界で始めての症例報告は1944年のことだと言われています。以来、現在も根本的な原因は不明です。(というか、原因が判明したら然るべき病名が付けられるため、原因不明な場合に「突発性難聴」と診断されるという状況もあるようで・・・)
この病気の大きな特徴は、何の前兆もなく、文字通り 突発的に発症する こと。
年齢や男女の差、過去の既往症に関わらず、だれでも発病する可能性があるのが怖いところです。
しかし、この突発性難聴という病気、原因は不明ですが、治療法はあります!
そして、早期治療が極めて重要なんです。
すなわち、もしあなたが突発性難聴になったとして、回復する/しないの大きな分かれ目は
- 突発性難聴の初期症状の知識を持っているかどうか
- それをもとに早い段階で病院に行くという行動を起こせるかどうか
というところにかかってくるのです。
症状を知らなければ、突発性難聴かもしれないと気づけないし、また、気づいたとしても、早期治療の重要性を知らなければ、仕事などを優先させて手遅れとなってしまうかもしれません。
実は私も20代の頃にこの病気にかかったんですが、たまたま早期治療ができて、運よく完治したという経験があります。
私はお医者さんではありませんので、病気の専門的なことについて詳しくはわかりません。でも元患者の一人として、自分が体験したことをお伝えしたいと思います。
昔の話ではありますが、症状の様子や、早期治療が重要であることは当時も今も変わりはありませんので・・・
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初期症状のセルフチェック項目
体験談の前に、まずは初期症状を押さえておきましょう。もしあなたが、ある日突然に 次のような違和感を感じたら、突発性難聴の可能性があります。
(これら全てがあてはまるということではありません。人によって症状がまちまちです。)
「初期」症状と書きましたが・・・
ここからさらに悪化していくとか進行するということではありません。なにしろ「突発」的に、フルスロットルの症状が現れるわけです。多少の波はありますが。
もし、今現在、上記のような違和感があったら、すぐに病院へ行ってみることをお勧めします。調べてみて、何でもなければそれで良し。
先のことが分かっていれば、最初の一歩も踏み出しやすいもの。次から、私が体験した時の事をご紹介しようと思います。
私の突発性難聴体験記
DAY1(突然の発症)
ある朝、目が覚めると左耳に違和感がありました。上記の症例のうち、
- 高速エレベーターで気圧が変化した時のような感じ
- プールで耳に水が入った時のような感じ
- 耳鳴りがする(ボーという低い音)
の3つが該当しました。
めまいや痛みなどは全くなく、ちょっと音が聞きづらいなという程度。耳抜きをすれば良くなるような気がして、何度も耳抜きをしたのですが、もちろん改善するはずもなく。。。
後の聴力検査ではっきりしたのですが、主に低音側の聴力が低下していました。
季節は夏。ちょうど数日前に海水浴に行ったこともあり、
ぐらいに、軽く考えていました。
違和感はずっと続きましたが、もちろん、当時はこうした病気があるなんてことは全く知りません。
慣れのようなものもあり、忘れている時間もあったように思います。また、聴力の低下も低音側だけだったし、反対側の耳は全く問題ないので、仕事や日常生活には大きな支障はありませんでした。
だから最初は、耳が聞こえづらいという違和感を感じても、こんなことぐらいで会社を休んでまで病院に行こうなんて思いもよらなかったし、その結果、手遅れになってもおかしくありませんでした・・・
DAY2(友人の何気ない一言)
その次の日、会社の同僚(一緒に海に行ったメンバーの一人です)との会話同僚
なんで耳押さえてんの?
私
このあいだ海に行ったせいか、耳に水が入ってるみたいな違和感があるんだよねー。鼓膜の内側にでも入ったのかな
同僚
今ごろ耳抜きかよ?
気になるんなら、とりあえず病院に行ってみれば?
気になるんなら、とりあえず病院に行ってみれば?
たぶん、本気で心配をしてくれているというよりは、(そんなこと言われても知らねーよ。)ぐらいの感じだったと思いますが、結果的にこの一言のおかげで私の耳は助かることになります。
私
そうだなー。ま、これを口実に会社休んじゃおーかなー
というノリで、次の日に病院へ行ってみることにしました。
DAY3(検査を受け、即、入院勧告)
当時住んでいた会社の独身寮の近くに、評判の良い耳鼻科のクリニックがあるという情報を聞き、とりあえずそこへ行きました。一通り問診された後、すぐ検査受けてくださいということになり、聴力検査室へ。
密閉式のヘッドフォンをして、そこから「ピーーー」という音が聞こえている間、ボタンを押すというという、会社の健康診断でもやったことがある検査です。骨伝導の聴力検査もありました。さすがにこれは会社の健診ではやったことはなかったかな。
併せてレントゲンもとりました。腫瘍が原因で聴力が低下することもあるそうなので、その確認だと思われます。
検査結果を持って、再び診察室へ。
耳鼻科の先生
これはおそらく突発性難聴ですね。
すぐに入院できますか?治療設備のある大きな病院への紹介状を書きますから。
すぐに入院できますか?治療設備のある大きな病院への紹介状を書きますから。
私
きょ、今日、今すぐにですか?
耳鼻科の先生
ええ。この病気は早期治療が肝心なんです。
遅くなると治るものも治らなくなりますよ。
遅くなると治るものも治らなくなりますよ。
カルテには、「左突難の疑い」と書かれてました。
その時にいろいろ聞かせていただいた話を総合すると・・・
- 前兆なく、突然発症する
- 年齢、男女、既往症の有無など関係なく、誰でも発症する可能性がある
- 医学的に原因は不明
- 早期に治療を開始することが極めて重要
- 風邪をひかないこと
- 喫煙はもっての他
- 通院治療も可能だが、入院が望ましい
- 治ってしまえば、再発しやすいということは特にない
早期治療
具体的には、一週間から10日以内に治療を開始すると回復する確率は高くなるけど、二週間以上たってしまっていたり、風邪をひいてしまうと完治する確率はかなり低くなってしまうと言われました。
原因
少し前に海水浴に行ったことは、ひょっとしたらきっかけになったかもしれないが、直接は関係ないだろうとのこと。
また、当時は仕事の環境が変わったところでした。ストレスがあったことも確かで、それが影響した可能性もあると言われましたが、とにかく原因は不明だそうです。
通院治療か入院か
通院治療もできるのですが、安静も重要なのでできれば入院が望ましいと勧められました。後になって後悔したくないので、入院することにしました。
いずれにしろ、入院なんてこれっぽっちも考えていなかったですから、びっくりです。
* * *
いったん会社へ行き、上司に事情を説明して1~2週間ぐらい入院するかもと伝えて了解を頂きました。まだペーペーだったので、代わりはいくらでもいましたからね。
バッグに身の回りのモノを入れ、電車とバスに乗って、その日の午後には紹介された病院に入院しました。
病院の名前は「千葉労災病院」。「労災」とありますが、赤ちゃんからお年寄りまで、誰でも受診できる病院です。
入院すると、さっそく次のような治療が始まりました・・・
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DAY4 ~(千葉労災病院での入院生活)
この病院には、医療用の 高圧酸素チャンバー という設備があります。これを使った治療方法とは、高気圧酸素療法(HBO、Hyperbaric oxygen therapy)というものです。
チャンバーの中に入って、高圧(確か2気圧だったかな)の高濃度酸素の状態にして、約1時間じっとしているだけ。
そうすることで血中の酸素濃度が上がるので、耳の聴覚細胞が活性化される効果があるのだそうです。突発性難聴以外にも、潜水病や一酸化炭素中毒など、いろいろな症状に対して用いられている治療法です。
チャンバ―は身体がすっぽり入るカプセルで、小型の潜水艇みたいな感じ。ある先輩患者さんは「回天」(戦時中の人間魚雷のことです wikiへ)と呼んでました。
高気圧だというから、息苦しいのかと思いましたが、全くそんなことはありません。酸素の濃度が高いせいか、さわやかで、元気になる感じがしました。
私の時は治療中に何の娯楽も無く、暇だったので気持ちよく寝てましたよ。病院によってはTVが視聴できるところもあるようです。
ただし、耳抜きができないと基本的にこの治療法は受けられません。
気圧が2気圧にもなるので、内耳の気圧とのバランスがとれないと、激痛が生じたり鼓膜が破れるということもあるからです。聞くところによると、耳抜きできない人でも、場合によっては鼓膜に穴を開けるなどしてこの治療を行うこともあるらしいですが。
また、高濃度の酸素の中では、静電気で発火するおそれがあります。静電気が発生しにくい綿の下着と術着に着替える必要がありました。
入院生活では、高圧酸素療法と、投薬(服用と点滴)以外に治療は無いし、身体は元気だし、ヒマでヒマでどうしようもなかったです。
二週間ぐらいの高圧酸素と投薬の日々のお陰で、私は幸いにも完治しました。つまり、耳鳴りが消えて聴力がほぼ元通りになりました。
しかし、この治療をすれば全員が完治するわけではありません。
完治するのは約3割
私と同じ病室の向かいのベットにいた人は、一か月以上入院して高気圧酸素治療を続けていました。しかし、ある日先生から、これ以上の改善は望めないと思われますがどうしますか・・・と。結局、それを受け入れて退院していきました。この方は、最初のうち風邪でもひいたのかと思って、しばらく放置して治療が遅れてしまったと後悔していました。
また、早期に治療開始したとしても、最初からめまいの症状が酷かったり、聴力の低下が著しい場合も回復は難しいようです。
突発性難聴の患者さん全体で見ると、完治するのは3分の1程度。多少の後遺症が残るものの程度が軽くなる人が3分の1で、残りの3分の1が改善せず聴力低下の状態のまま固定されてしまうそうです。
突発性難聴の治療法
現在までのところ、特効薬はありません。治療方法についても統一されたガイドラインはなく、病院や医師ごとに選択が異なるのが現状です。代表的な治療方法としては、次のような方法があるようです。
- ステロイド剤投与
- 血液の循環を改善する薬の投与
- ビタミン剤の投与
- 高圧酸素療法
初期の一次治療としては、ステロイド剤の投与による治療が一般的とされています。
私の場合は、薬剤の投与と、最初から高圧酸素療法も併用してもらえました(もちろん保険治療です)。
とにかく、早期受診を
ある日突然、ボーだったりキーンといった耳の違和感、耳鳴りが起こり、それがずっと続く・・・そんな症状がでたら、突発性難聴かもしれません。そうなったら時間との勝負です。面倒くさがらず、すぐに耳鼻科を受診しましょう。別の病気かもしれないし、なんでもなければそれで良いわけだし。
病院によっては、初診の日に検査ができないこともあります。特に大きな病院では、「聴力検査が空いているのは1週間後なので、予約をして帰ってください~」なんてことがあるかもしれません。
当然そんなに待っていたら手遅れになるかもしれませんから、すぐに検査をしてくれる他の病院へ直行されることをお勧めします。
今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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