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6月に入り、ムシムシする日が増えてきた今日このごろ、天気予報で「所によって雷雨」とアナウンスされる機会が多くなってきました。

私はあのピカッと光るのは怖くてイヤなんですが、なぜか小さいころからゴロゴロゴロ・・・という音は嫌いじゃなかったんですよ。

思うに、電光は「落雷=怖い」というイメージがあるんですが、低くて長い雷鳴は「遠いところ=自分の身は安全」ということで、雷という “壮大なイベント” に無邪気なワクワクを感じていたのかもしれません。

あなたにとって雷はどんなイメージですか?


雷って、当たり前に起こる自然現象ですけど、そのスペックを見ると、すべてが想像を超えたスケールの現象であり、なんとも不思議な現象であることにあらためて気づかされます。

例えば、電気は音をだすイメージないですよね。「ビリビリ」はシビれる感覚をイメージしたものだし、乾燥した冬の静電気だとパチッとカワイイ音をたてるぐらい。それなのに…

雷は、なぜあんなに大きな音がなるんでしょう?

今回は、この基本的な疑問を考えるのとともに、この大きな音を利用して、

雷までの距離を推測する方法

についてもあわせて取り上げてみたいと思います。

それでは一緒に見ていきましょう!
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雷はなぜあんなに大きな音を出すのか

一言で言えば、

空気が破裂するため。


つまりは大きなパンクです。例えば、風船や自転車のタイヤに空気を入れてて、どんどん空気を入れて続けると、内部の気圧が高くなっていき、最終的に限界を超えてバンッと破裂しますよね。

雷が発生したとき、これと同じようなことが起きてるんです。



以下のような流れで、詳しく説明していきますね。

  1. 落雷により空気中に大量の電流が流れる
  2. 電流の経路内の空気が急激に熱せられる
  3. 急激に熱せられた空気は急激に膨張し、衝撃音が発生する

1.落雷により空気中に大量の電流が流れる

通常、空気は絶縁体ですから電流は流れません。しかし非常に高い電圧がかかると、絶縁が破れ、一気に大量の電流が流れます。

これが、物理学的に言えば「放電」、気象学的に言えば「雷」というわけです。

このときのエネルギーがものすごい。

電流は2万~3万アンペア
電圧は数億~10億ボルト

に達すると推定されています。


電流は避雷針を利用した計測器で直接測定が可能なのですが、電圧値は大きすぎて直接測定することが不可能。空気という高い絶縁環境で絶縁破壊を起こすことから、数億~10億ボルトと推定されるそうです。



少なく見積もって、「2万アンペアの1億ボルト」としても、その電力(電流 × 電圧)は2テラワット(2000ギガワット)ということになります。ケタが大きすぎてなんだかイメージがわかないですよね。


例えば・・・
映画「BACK to the FUTURE」では、タイムスリップに必要な電力が「1.21ジゴワット」とされ、時計台への落雷からそのエネルギーを得てました。

映画トリビアによれば「ジゴワット=ギガワット」ということのようです。とすればこれは「1.21ギガワット」なので、雷は1撃でそのタイムスリップを1,600回以上行えるだけのエネルギーを持っているということになります。

・・・事例がまずくてすみません、やっぱりイメージ実感できなかったですね。

2.電流の経路内の空気が急激に熱せられる


要するに、雷は途方もないエネルギーを持っています。

こんなものが通過すると、その経路内にある空気は一瞬で 2~3万度 に熱せられます。

これまた大きすぎて実感がわかない数字ですね。太陽の表面温度と、地球中心部の核の温度はほぼ同じで、約6千度と言われていますが、それよりはるかに高い温度にまで熱せられるということです。


熱せられた空気は、一瞬で高温高圧のプラズマ状態になります。プラズマ化する際に強い閃光を放出し、これが雷の電光となります。

■ プラズマ
固体、液体、気体に続く、物質の第四の状態と言われます。

温度上昇とともに、電子の運動エネルギーが原子との間の結合力を上回り、激しく動き回っている状態です。

身近な例としては蛍光灯がプラズマを利用しています。
真空に近い管の中で放電を起こし、水銀電子をプラズマ化させることで紫外線を放出させ、その紫外線を蛍光塗料に当てることで可視光にしています。


3.急激に熱せられた空気は急激に膨張し、衝撃音が発生する

急激に熱せられた空気は急激に膨張しようとします。

ところが周囲の空気が邪魔をするので衝突をおこし、衝撃音が発生 します。

これがまさに、風船や自転車のタイヤに空気を入れすぎて、破裂するときと同じような状況なんですね。

ちなみに、これって、風船やタイヤといった「ゴム」が破れる音ではありませんよ。例えば、風船の中に空気の代わりにどんどん水を入れていった場合。

風船は割れても、ビチャッと水が飛び散るぐらいでたいして大きな音はしませんよね。

水は液体なので、「破裂:急激に膨張」ということが起こらないからなんです。

つまり何が言いたいかというと、風船もタイヤもそして雷も、大きな衝撃音が発生するのは、空気が急激に膨張するから、ということです。

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ピカッからゴロゴロまでのズレ時間で雷までの距離を計算してみよう

以上の説明ででてきた、空気がプラズマ化するタイミングで、電光と雷鳴はほぼ同時に発生します。

いうまでもなく光と音とでは伝わる速度が違いますから、遠くになるほど伝わってくる時間差が大きくなります。

この時間差をもとにして、雷の発生地点までの距離を推測することができます。


光の速度は秒速30万km。つまり1秒間に地球の外周7周半に相当する距離を進みますから、ほぼ一瞬で伝わると考えてよいでしょう。

一方、音の速度はそれよりずっと低速。よく秒速340mと言われることが多いようですが、これは1気圧で気温14℃の場合に相当します。ここでは雷の多い夏場の日中を想定し、気温31度として補正しますと、秒速350m となります。

光と音のズレ時間(T秒とする)と、距離の関係は以下のようになります。

T × 350(m) (気温31℃の時)


ズレ時間 雷までの距離
1 秒 350 m
2 秒 700 m
3 秒 1050 m
4 秒 1400 m
5 秒 1750 m
10 秒 3.5 km
20 秒 約 7 km
30 秒 約 10 km
40 秒 約 14 km

雷鳴の聞こえる範囲は、最も遠くで約10km~15km と言われます。これは時間差で言いますと、30秒から40秒 ぐらいに相当します。

結構長いですね。これだけ間隔があくと、もう電光がピカッときたことすら、忘れてしまいそう。すごく遠くの雷という気がしてしまいますね。


でも、これだけ離れていれば大丈夫、なんて言えないんですよ。

落雷は雲の真下に落ちるとは限りません。横に走って落ちる事もあります。10km~15km 離れていても、すぐ近くに落ちる可能性があるのです。

とにかく雷鳴が聞こえたら、すでに落雷の危険が差し迫っていますので、速やかに避難等の対処を考えることをおすすめします。


■ 関連記事
ご家庭での家電の雷対策について、別記事でご紹介しています。ご興味があればこちらもご覧ください。


おわりに

まとめます。

Q.雷は、なぜあんなに大きな音を出すの?
A.雷の放電経路内にある空気が熱せられることで急激に膨張し、衝撃音が発生するからです。

Q.雷までの距離の測り方は?
A.ピカッからゴロゴロまでのズレ時間をT秒とすると、
T × 350(m) (気温31℃の時)

※ ただし、雷鳴が聞こえたら既に落雷の危険がありますから、距離に関係なく速やかに落雷対策を考えましょう


* * *

「雷はなぜあんなに大きな音を出すのか」の問いに対する科学的な答えは以上です。


もし、小さなお子さんに聞かれた場合だったら、次のように答えてもいいんじゃないかなと思います。

『 雲の上の雷さまが、
 ”雷が落ちるから危険だよ。すぐ逃げなさい”
って教えてくれているんだよ。』
今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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