エスカレーターの片側歩行と両側立ちで、輸送効率が高いのはどっち?
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少し前に、駅で「エスカレーターでは歩かず、両側に立って乗りましょう」的なキャンペーンが行われていました。
確かに、みんな歩かず立って乗る方が、安全でやさしい乗り方だなと思います。身体的な都合でいずれかの手すりにつかまるのが困難な人もいるし、荷物で狭くなったスペースを無理やり歩かれると、身の危険を感じることもあります。
でも、「エスカレーターは歩くより立った方が効率的」と言われると、ちょっと疑問。
立ってじっとしているより、歩いた方が効率的じゃないの?って気がしませんか?
歩く人のために片側の列が空けられているのに歩く人がほとんどおらず、立って乗る方だけがずらっと渋滞しているような光景をよく見ます。そういう時は確かに効率が悪いなあと思いますけど、混んでいる時間帯だと、どちらも人がいっぱいで、歩いている列の方が人の進みが早いような気がします。
というわけで、本記事では、
エスカレーターの片側を歩く場合と、両側とも立つ場合とで、いったいどちらの方が輸送効率が上なの?
ということを考えてみたいと思います!!
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輸送効率の優劣は?
結論から言えば、以下のようになると考えています。
簡単に優劣をつけることはできず、場合によって異なり・・・
■ 両側で行列ができるほど鬼混雑している場合
歩く列が効率が良い (立つ側が"通常立ち"の場合)
立つ方が効率が良い (立つ側が"窮屈立ち"の場合)
■ 歩く列に空きが生じる程度の混雑の場合
歩く列を設けず両側とも立つ方が効率が良い
■ ガラガラな場合
どちらも変わらない
次から、このように考えた理由について詳しく説明していきますね!
輸送効率を決める要素は二つある~「スループット」と「人気度」
輸送効率は、原理的には、一定時間内に何人の人が通過できるか、という能力に大きく依存します。このように、
一定時間内に処理できる能力のことを
スループット と呼びます。
一人一人の移動速度が速ければより多くの人が通過できそうな気がしますよね。しかし、実際はそうとは限りません。いくら移動速度が速くても、人と人の間隔が広くなってしまった場合は、一定時間内に通過できる人数(スループット)は減ってしまいます。
例えば、
高速道路で車を速く走らせても、安全のために車間距離を長くとれば、結果として走行できる車の合計台数は少なくなることがあり得ます。 ということで、まずは、
歩く場合と立つ場合とで、どれくらいスループットが違うか をきちんと定量的に見積もる必要があります。
それから、スループットよりも、どちらの列を選択するかという
人気度のアンバランスが、もっと輸送効率に影響する面もあります。
なぜかと言いますと、
いくら処理能力が高くても、いずれかの列を利用する人が少なくて「開店休業」の状態であれば、そちら側の能力(スループット)をフルに活かされないからです。そうすれば全体としての輸送効率が落ちてしまうことになります。 このように、列による人気度のアンバランスも、輸送効率に大きな影響をもたらします。
こうした人気度のアンバランスが出てくるのは、あまり渋滞していない時ですね。鬼のように渋滞してくると、歩く方も立つ方もビッシリで、人気とかそんなことを言っている余裕がなくなりますので。それと、混雑していてもあまりに長いエスカレーターだと、歩いて登る方は人気がなく、立つ方は大人気で長蛇の列ということにもなりますね。
つまり、
輸送効率はスループットと人気度という二つの要因によって決まります。
そしてその依存度は混雑具合や長さ等によって変わってくる ということが言えそうです。
シミュレーションの例
この課題に関してシミュレーションでアプローチしている
外国のニュース記事(クリックで別タブが開きます)があります。(以前は無料で閲覧できたのですが、現在は有料記事になっているみたい・・)
記事内にアプリがあって、自分で試すことができます。スライドバーで混雑度を設定して、その場合に輸送できる人数がカウントされるというものです。やってみるとなかなか面白いですよ。
混雑度のスライドバーを設定する度に、人数が0からカウントし直しされます。最初のうちは「片側歩き」の方が人数が多かったりすることもありますが、しばらくして落ち着くと「両側立ち」の方が逆転する結果になるんですね。
ガラガラな時だけ、互角なのですが、混雑度が増してくると必ず「両側立ち」の方が勝つような結果になります。
列による人気度の違いがどのように輸送効率に影響するかをイメージとしてとらえるには秀悦なツールだと思います。
ただし、このシミュレーションの前提条件には、大きな疑問を抱かずにはいられません。はっきり言うと、フェアじゃありません。 つまり、鬼混雑してきたときの基本的なスループットにつきまして、
歩く側は現実的な設定(間を2ステップ空ける)になっているのに対し、立つ側は潜在的最大スループット(ステップ空けずに密着して立つ)となっている のです。
全員がここまで窮屈に乗ることは、現実的に考えてあり得ないでしょ~
というわけで、次に、そんな鬼混雑している場合でのスループットを定量的に考えてみました。
両側の列で行列ができるほど混雑している場合のスループット比較
混雑がひどい状態で、両側とも行列になっている状態では、輸送効率に対して、純粋に
スループット が支配的になります。人気度の違いによって「無駄に片側が空いている」という状況が無いわけですから。
立つ列と、歩く列とで、スループットが原理的にどう違うのかを考えてみましょう。最初にいろいろなパラメータを仮定し、少々計算を使って考えてみますね。
ちょっとややこしいかもしれないですが、分かり易く説明するので、付いてきてくださいね!!
それぞれどれくらいのパーソナル空間が必要か
前の方で、高速道路の車で例えたように、スループットを考える上では、移動速度だけでなく、人と人との間隔も重要な要素となります。
実際に駅のエスカレーターを観察してみたんですが、両側とも行列ができるほど混雑した場合には、
- 立つ方:各人の占有空間は2ステップ
(間に1ステップ空けて立つ) - 歩く方:各人の占有空間は3ステップ
(2ステップ空けて歩く)
という状況が殆どだったように思います。
続いて速度。
それぞれの移動速度は?
仮に、エスカレーターの運転速度が非常にゆっくりだったらどうでしょう。
極端な話、運転速度が限りなくゼロに近づけば、もはやエスカレーターはほぼ階段と同じ。そうすると、立つ方のスループットはほぼゼロになります。 一方の歩く側では、自分で歩く分は確実に進むことができますから、スループット的には圧勝です。
逆に、エスカレーターが高速になればなるほど、「歩くこと」のスループットへの貢献は、相対的に小さくなっていくものと考えられます。
このように、エスカレーターの運転速度、および歩く速度も、スループットを考える上で重要な要素となります。 ひとくちに「駅のエスカレーター」と言っても、その運転速度は画一ではありません。高速なものだと40m/分 ぐらいまでで、30m/分 程度の物が一般的となっているようです。
一方、歩く速度(エスカレーターに対する相対速度)は、ある調査によると、平地を歩く速度のおよそ半分ぐらいとなるそうです。
速度についてまとめますと、
エスカレーターの運転速度は 30m/分 とし、
歩く速度は 30m/分 とします。
(たまたまエスカレーターの運転速度と同じ)
と考えることとします。
で、結局スループットはどれぐらい?
以上のパラメータから、それぞれのスループットを見積もってみましょう。
ここで、スループットとは、
「単位時間(1分間)あたりに運べる人数」 であると定義します。
それって、
(1分間にエレベーターが進む距離+1分間に人が歩く距離)を、一人当たりの占有空間で割ったもの に等しいはず。
ですから、
エスカレーターの運転速度 | Ve(m/分) |
人の歩く速度 | Vp(m/分) |
一人当たり占有ステップ数 | S(ステップ) |
ステップの幅 | L(m) |
とすると、スループットは
(Ve+Vp)÷(S×L)(人/分) となります。
実際に数字を入れて計算してみると・・・
エスカレーターの運転速度:Ve=30m/分
ステップの幅:L=0.4m (一般的にはこれくらい)
は共通で、
人の歩く速度:
Vp=30m/分(歩く場合)
Vp=0m/分(立つ場合)
一人当たり必要ステップ数:
S=3(歩く場合)
S=2(通常立ちの場合)
S=1(窮屈立ちの場合)
から、各スループットが産出され、順に並べると
窮屈立ちの場合:75人/分
歩く場合:50人/分
通常立ちの場合:37.5人/分
となります。
上記のように求めた数字から、冒頭に掲げたような結論が導かれたわけです。
■ 両側で行列ができるほど鬼混雑している場合
歩く列が効率が良い (立つ側が"通常立ち"の場合)
立つ方が効率が良い (立つ側が"窮屈立ち"の場合)
前述の海外記事で紹介されてたシミュレーションでは、立つ側はまさにその「窮屈立ち」の状態が想定されているのでした。もし、「通常立ち」の状態を想定していたら、結果は逆転するはずです。
では次に、片側で空きが生じて、もう片方だけが混雑するような、人気度に差が生じる場合を考えてみましょう。こちらは特に計算を立てて考えなくとも、経験上お分かりになるのではないかと思い、文章による説明とさせて頂きますね・・・
机上のスループットより人気度が支配的となる場合
あまり混んでいない時間帯や、
特に長いエスカレーターで顕著なのですが、歩く側に挑むチャレンジャーが少ないので、人気度という面では、立つ側に人が集中してしまいます。 ずっと歩いて登っていくのは体力が必要だし、降りる場合でも意外にモモがくたびれますし、膝に衝撃がきますからね。
その結果、
歩く側はガラガラでスループットが無駄になってしまうのに対し、もう一方の立つ側はスループットの限界を超えて、乗り場に人が滞留し大行列、というばかげた状況になりがちです。 こうなってしまうと、輸送効率は片側空けて歩くスペースを空けるより、両側立ちの方が有利です。
行列待ちが耐えられるぐらいの混雑度であれば、並んででも立って楽をしたいという欲求が勝り、こうしたことが起こり得るのですね。
このように、
■ 立つ列だけに行列ができる程度に混雑している場合
両側とも立つ方が効率が良い
となります。
最後に、次はガラガラの場合。
ガラガラの場合はどっちも変わらない
どちらの列にも行列ができていない状態とは、エスカレーターに来た人が直ぐに乗れるということです。こんな場合は、どちらの乗り方をしても輸送効率は変わりません。
これは、エスカレーターの乗り場の前に
ボトルネック がある状態ですので、エスカレーターの乗り方の違いで輸送効率の違いは現れないのです。
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「効率的」という言葉の二面性
しかし、 以上のような説明をされても、まだ受け入れにくいというか、モヤモヤしている方もいらっしゃるかもしれませんね。
このモヤモヤの原因は、たぶん
「効率的」という言葉に、二面性があるからだと思います。
上記で論じていたのは、あくまでも
「輸送効率」であって、全体的な処理能力にフォーカスするものです。
要するに早く
乗客全員をホームから移動させることを目的とするような、いかにも鉄道事業者が考えるような全体効率の論点です。
一方、個人個人の
「効率的な移動方法」を論じるのであれば、もちろん、
早く目的地に着くためには「エスカレータ―を歩く方」が効率的、ということができます。
エスカレータ―の速さ+歩く速さ で、階段を歩くよりも、またエスカレータ―で立って乗るよりも、早く目的地に着けます。
具体的に先ほどの値を使うと、分速30mのエスカレータ―速度に、分速30mの歩く速度が加われば、およそ半分の時間で降り場に到達できる計算になります。
単に「どっちが効率的か」というだけでは、こちらの個人的な移動効率の論理で考える人がいてもおかしくはないでしょう。
だから、何を達成するための「効率」か、ちゃんと定義しておかないと、議論がすれ違ってしまいます。
「両側に立って乗りましょう」とキャンペーンポスターが貼ってあるけど
以上の「効率」についての理系的考察もふまえて、駅などで見かけるエスカレーターの乗り方キャンペーンについて、社会学的に(?)少し考えてみたいと思います。
エスカレーターは両側立ちで乗るべきか、歩く人のために片側を空けるべきか?
それは
多様な視点 のある非常に難しい問題だと思います。
いろいろな立場や状況を、想像も含めて、以下に挙げてみます。
利用者の立場
駅で電車に間に合わないからと一秒でも早く急ぐ人もいれば、歩く列だからと仕方なく歩いている人もいる。
自分は急がないから急ぐ人を優先させてあげようと道を譲る人、後ろからの圧力が怖くて仕方なく譲る人、歩かなくて済むなら一歩でも歩きたくない人もいる。
体力がある人、無い人。身体的事情から、歩いたり右あるいは左に立つのが困難な人もいる。
争うのが嫌いな人もいれば、血の気が多い人もいる。
事業者(鉄道会社など)の立場
特に列車のダイヤが込み入っている時間帯は、すべての乗客を早く移動させないとホームに人があふれてしまうから、あくまでも輸送手段として、全体的な輸送効率を上げたい。もちろん安全が最優先、と呼び掛けている。
エスカレーター製造者の立場
建て前としてなのかもしれないが、歩くことを想定して作っていないと主張し、安全のために歩かないよう呼びかけている。
おそらく、技術的にできないというよりは、その方がコストが低く抑えられるし、「歩行を前提とした安全基準を守りなさい」などの法的規制等が無い限りは、現状のようなスタンスになるのは致し方ないと思われる。
人が動くことを前提とした安全基準って、すごくハードルが高くなると想像できる。
設置している施設の状況
設置場所が駅か空港かショッピングセンターか、病院か、公共施設か。これによって急ぐ人の割合、運動能力や年齢層、荷物の大小がさまざま変わってくる。
エスカレーターそのものの状況
運転速度、横幅、長さ、並列する本数、近くにエレベーターや階段があるかなど。
混雑状況
ラッシュ時か、閑散期か。
・・・など、など。
エスカレーターを取り巻く環境は本当に多種多様です。
例えば、火事の時なら、輸送効率が高いバケツリレーの方が良いでしょう。一方で命を救うための輸血を、たった1パックでもいいから一刻も早く手術室に届けたいのなら、足の速いランナーに走ってもらった方が良いでしょう。
でもみんなそんな共通の目的意識を持ってエスカレーターに乗ってるわけじゃないし、エスカレーターの設置環境や混雑状況だって様々。
つまり、
場合によって、個人的な移動効率が許容されるか、全体的な輸送効率を優先すべきか、画一的な正解は無いのではないでしょうか。 そのようなカオスな状況の中、最適解ではないかもしれないけれど、一つの局所的な合意として、
現在は片側立ちで歩くという乗り方がマナーとして浸透しています。日本だけのガラパゴス文化ではでなく、外国でも同様です。
それをキャンペーンポスターだけで「利用者の乗り方マナーはこれです」と訴えたからといって、短期間に自然に合意形成ができるとは思えません。「急ぎたい」という欲求を全員に対して抑え込ませることは難しく、絶対に不満をもつ人がいるでしょう。
エスカレータ―すべてを一絡げにして、「乗り方のマナーはこれです」などと決めてしまうのはいかがなものかなと思います。
もちろん、危険を誘発するような無理な通行はいけない、というのが大前提ですよ。
「急いでるからって、歩道で歩行者を押しのけたり、スピードを出して自転車に乗ってはいけない。許可された場合のみ、徐行させてもらっている」のと同じくらい、自明なマナーだと思います。
正直、私的には、エスカレーターの乗り方マナーなんかより、歩道での危険な自転車走行の方がもっと重大な社会問題だと思いますけどね・・・
場合によっては何らかの誘導が必要なのでは
しかし、歩く方がガラガラで立つ側が異常に混雑している時だけは、何とかしてもらいたいなと思います。
これ、特に長いエスカレーターで顕著ですよね。
先ほども書きましたが、長いエスカレーターですと、歩く側はガラガラになってしまうのに対し、もう一方の立つ側はスループットの限界を超えて下に人が滞留し大行列、というばかげた状況になりがちです。
それに万が一、接触して転倒などの事故がおきたとしたら、長さが長いほど被害も大きいでしょうから、安全上も何か対策してしかるべきかと。
ところで、話題の新製品が発売される時など、徹夜組がでてニュースになるほど長い行列となったりしますよね。普通、この手の行列は人々のマナーに任せて放置されているでしょうか?
そんなことをしたら近所迷惑で大ヒンシュク。まともな販売店だったら、秩序だった行列となるよう、人を使って誘導しているはずです。
駅などでも同様ではないでしょうか。
人々は自分の周りしか見えていませんし、まずは自分の事情を優先して考えがちです。また、歩いた方がどんな場合でも輸送効率が良くなると信じているのかもしれません。 鉄道会社が、アリバイ作りのためだけでなく、本気で安全でかつ輸送効率を上げたいと考えているのであれば、マナーに訴えるだけでなく、コストが多少かかってでも、なんらかのコントロールや誘導が必要ではないでしょうか。
コントロールの方法としてはいろいろあるように思います。例えば・・・
- 複数台あればどれかを「歩行可」あるいは「歩行不可」に設定する。
- 呼びかけ誘導員を乗り場に配置。
- 適宜、ペースメーカー係員(立って乗り、歩きをブロックする役割の人)を搭乗させる。
など。
呼びかけ誘導員の人は、乗り場で両側立ちを呼びかけるだけでなく、将棋倒し防止のためにスペースを空けるという誘導もできるでしょう。
その誘導に実力行使が伴ったのが
ペースメーカー係員というイメージです。もちろん、立って乗るのは通常は「歩く」とされる側です。また、身体的事情から通常と同じ側に立てない人がいれば、そのリクエストに応じて個別にサポートすることも可能でしょう。
ひょっとしたら最初は血の気の多い乗客が怒鳴ったりするかもしれませんが、業務として行うことだし、乗客の多くには理解が得られるのではないでしょうか。
後ろからあおられる恐れがある
こうした誘導もなく、個人個人の意識に任せていたのでは、乗り方を変えるのは難しいと言わざるを得ません。
エスカレーターの片側空けって、もう何十年もやられてきたことですから、なかなかみんなの意識が
一斉に変わることはないでしょう。啓蒙活動って、徐々に意識が変わっていくのを期待する方法だと思いますが、この場合、それだと難しいと思うのです。
一方で、
「ファーストペンギンになりましょう」(リンク先はNHKのサイト)といった呼びかけもあります。
ガラガラの歩きの列に自ら進んで立って、全体善をめざそう!という話は、
渋滞してる高速道路などの合流において、ファスナー合流(ジッパー合流)を実践する(リンク先は当サイトの関連記事)のと少し似ているところがあると思います。
でも、エスカレーターでのファーストペンギンって、ファスナー合流でのそれより、もっと勇気というか覚悟みたいなものが必要になると思うのです。
なぜなら、
エスカレーターでは後ろからあおられる恐れがある から。
"二人目が続いてくれるとは限らない"というリスクはどちらも同じなのですが、ファスナー合流では、道を譲ってくれた"優しい車"が後ろにつきますから、あおられる心配はまずあり得ません。
エスカレータ―では後ろから歩いてくる人間を選べないですから。何より小心者の私にはとても無理です。
実際、エスカレーターで、あえて歩く側で通せんぼ行動をとる人がいて、
後ろから歩いてきた人と「どけ・どかない」の揉め事になるといった事例があるようです。
まだまだ歩くことを「権利」と思っている人が多い中、一般人が体を張ってそれを止めようとすれば、
「ワレ、じゃまや(怒)」となるのは想像に難くありません。
ファーストペンギンになりましょうという呼びかけの趣旨は理解できます。バリアフリーや安全性のこと、そして全体的な輸送効率を上げようという意図は賛成ですが、一方で、これによって別の形の危険(暴力、無理なすり抜け等)を引き起こしはしないかが心配です。
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おわりに
今回は、エスカレーターの輸送効率について考えてみました。以下のようにまとめられるかなと思います。
輸送効率は、渋滞具合、原理的なスループット、人気度が影響する。
ガラガラの場合は、どちらの乗り方でも輸送効率は変わらない。
片側が渋滞する程度の場合は、人気度の違いによるスループットの無駄が生じない「両側立ち」の方が輸送効率が高い。
両側とも渋滞して、スループット勝負になると、密をいとわず詰めて乗るという非現実的な潜在的なポテンシャルは「立ち」の方が高いが、通常の乗り方であれば「歩き」の方が輸送効率が高い。
ただ、これは駅での状況を想定したものであり、エスカレーターに求められる事のひとつである「全体的な輸送効率」を語っているにすぎません。
いずれにしろ、「エスカレーターの乗り方マナーはこれ!」と単純に言い切るのはどうなのかな?と思います。少なくとも輸送効率という視点からは。
たかが動く階段。発明されてからかなりの年月がたってますが、乗り方のマナーはまだまだ発展途上のようです。
今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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確かに、混雑度が高い場合 スループット がマズ重要な点は否めません。
スループット が低ければ (ラッシュ時は)前の電車から降りた人が完全に捌ける前に次の電車が到着し、エスカレーター待ちの行列がどんどん長くなり、そのうちホームが溢れて電車を降りることが出来なくなり/ホームから転落する人が出る事態になる。先ずスループット、「急ぐ人…」なんて事は二の次にする必要があります。
だけど、
原理的に…なんて表現をする割には、その理由は えらく情緒的・感情的なのには驚かされます。
>立って乗る方は、朝の通勤時でも、間に1段空けて乗るのが一般的かと思います。つまり、一人当たり2段の空間が必要です。
>もちろん、詰めようと思えば、各段に次々と乗ることも可能です。でもそれだとかなり窮屈だから、親密な人同士でない限りはそこまで詰めて乗ることはないでしょう。
混雑駅のラッシュ時にはこんな贅沢なことは言っていられません。立ち止まり車線は詰めて乗ることは容易なので、詰めて乗るものと見なして議論するのが普通。
>歩く方は、前の人の足にぶつかるから、各段に乗るのは不可能。歩くかぎりは、最初の踏み板に足を乗せた次の瞬間に、次の1歩を踏み出す場所がクリアである(つまり、前の人の足が残っていない)必要がありますから。
安全第一だとこの考えは正しいのですが、平均的な人は 前の人は速やかに次の段に進んで目の前はすぐクリアになる筈だという予測に基づいて投機的に自分の足を踏み出す(が、投機に失敗すれば将棋倒し事故になる。車間距離不足高速道路と同じ事)
>でもそれだけだと、歩くにはかなり窮屈な感じです。それでは前の人が突然止まるとぶつかってしまう恐れがありますので、実際はもっと間を空けるのが一般的でしょう。
混雑駅のラッシュ時にはこんな贅沢なことは言っていられないのは一緒。結局、歩き車線も各段一人は乗れる事になる。
というか、現実にはさらに投機を推し進めて歩き車線は各段に二人づつ乗ったかの如き状態になっていることもある(エスカレーターが一段動く時間は0.8秒が標準的。並の運動神経の人なら0.4秒間隔でエスカレーターに進入することはそんなに難しくない。これなら歩いたほうがスループットは上がる。が、危険度増加は否めない)。エスカレーターを歩くことはかなりくたびれる事なので、くたびれる事覚悟で急ぎたい人は歩き車線/平凡な人は立ち止まり車線を選び、全体のバランスが取れる。
この辺は建前と本音みたいなもの。安全第一だと 少なくともラッシュ時だけは歩き車線禁止にすべき なんて事になるが 本音(安全軽視 「急ぐ人…」なんて事優先)だと ラッシュ時こそ歩き車線が必要という結論になる(凡人の直観通りになってしまう)。
凡人さん、こんにちは。JYです。
コメントありがとうございました。
原理的と表現したのは、「ボトルネックでの必要空間が大きい⇒スループットが落ちる」という部分に対してのつもりでした。しかし、必要空間の比較に関する前提については確かに曖昧だったと思います。
これは、実際に混雑する駅のエスカレーターで人の流れを観察して気付いたことと、自分で間隔を詰めて歩こうとした時の感覚(各段で乗込むのは距離近すぎて危険を感じる)を基にしたので、感覚的というか、いわゆる主観の入った官能的評価ということになります。
そうした前提に基づいているときちんと言及しないで簡単に「原理的には」と書いてしまったのは不適切でした。その辺り、記事を加筆修正させていただきました。
ご指摘ありがとうございました。
一般人が観察するエスカレーターの様子は
①片側だけでも運び切れる程度の混雑度だと:立ち止まり車線の入口渋滞はせいぜい数人(10秒も待てば通過可能)、歩き車線は(入口渋滞はないが)利用者稀少…この状態なら「お歩きになる方のため◯側をお空け下さい」もそれなりに納得できる
②混雑度が上がってくると(片側だけでは運び切れないが両立ちなら運び切れる程度):立ち止まり車線の入口渋滞が長くなって来ると(分単位で待たされることも)本当は歩きたくない人も歩き車で妥協するようになってくる。が、歩き車線は入口渋滞ナシ/せいぜい数人の渋滞…この状態では恐らく、両立ちのほうが全体の幸福度の合計は大きい
③さらに混雑度が上がってくると:歩き車線にもそれなりの列が出来る。が、立ち止まり車線より歩き車線のほうが列の進み方が倍くらいは速い…この状態では歩き車線は超車間距離不足高速道路のようになっていて危険ではあるが、これを禁止して両立ちを強制したのではラッシュが捌き切れないから必要悪として黙認している
限界状態になると、歩き車線のほうが効率が良いのである(危険に目を瞑れば…ではあるが)。こうなる原因は、
「必要空間」とは言うが、この世は三次元空間というより時間も加えると四次元空間である。「必要空間」でなく「必要時空間」で評価すべきである。
確かに 立ち止まりなら必要空間は1段分でよく、歩くのなら1.5~2段分くらい必要であろう。が、占有時間が 立ち止まりなら エスカレーターが一段動く時間0.8秒必要だが 歩くのなら 普通の運動神経の人なら倍速か三倍速位までは可能。占有時間が短くて済むから「必要時空間」と考えると少ない⇒エスカレータが一段動く間に同じ空間を時分割使用して2~3人が流入可能。結局、スループットは高くなるのである(が、これではまるでサーカス。安全性は低い
ドミノは全ての駒が同じサイズだが将棋は歩兵と王将ではサイズがかなり違う(人間のサイズが人によって違うのとおなじ)。だからエスカレーター事故は ドミノ倒し でなく 将棋倒し なのである。
凡人さん、こんにちは。
レスがおそくなりましてすみません。
今回の投稿のネタを思いついたのは、実際に駅で自分が実感したことがきっかけでした。前の人の後に続いて乗ろうとした時、歩行する場合(関東でいう右側)では、前の人との間が2ステップぐらい空いちゃうんです。私が鈍いからかもしれませんが、よっぽど思い切って、前の人の足にぶつかってもいいやぐらいに覚悟して、間1ステップ空きができるかできないかぐらいの感覚でした。
一方、立って乗る場合は、間1ステップ空けるのは標準的な乗り方で、すこし窮屈なのを我慢すれば、間を空けず直後のステップに乗り込むことが可能です。連れ合いだったらむしろこの距離感の方をとるかも。
こうしたことから、「原理的に立つ方がスループットが上がる」と考えたのですが、凡人さんにご指摘いただいて、じっくり考えるうちに、ちょっと単純に考え過ぎていたと気づきました。さらに前提が必要だとわかってきました。
前提の一つが、想定しているエスカレーターの輸送速度がある程度速い(通常の駅のエスカレーター程度)ということです。
「必要時空間」で考えなさい、という ご指摘の通り、確かに 歩行が高速またはエスカレーターが低速の場合、極端な話、運転速度がゼロの場合(ただの階段)ですと、もちろん、「原理的に歩く方が圧勝」ですね。
もう一つの前提が、立つ方が勝つには、最大限に詰めて乗ることを想定しないといけないということです。これは実際の乗り方とは異なっている(1ステップ間を空けて立っている人が多い)ので、「通常の状態」の話ではなくて、単に「そういうポテンシャルがある」という話していることになります。
これらのことを整理し直し、少しお時間を頂いて記事内容をもう一度検討してみようと思います。
いろいろ考えるきっかけを与えて頂き、ご教授感謝いたします。