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高速道路 名神高速道路と東海北陸自動車道が接続する一宮ジャンクション(以下、一宮JCT)では、交通量が増えると渋滞が多発します。

特に目立つのは、名神高速の上りに、東海北陸道からの合流がある部分です。


合流区間が長く、いたるところから車が割り込んでくるため、本線側(名神の上り線)の渋滞がひどくなるのです。

本線側に生じる渋滞を緩和するため、2019年11月29日より、NEXCO中日本は「ファスナー合流大作戦」に討って出ました。

具体的には、合流区間の長さを短くして、ファスナー合流を促す構造にしたのです。

対策実施後、渋滞が発生しやすい年末年始を挟む2か月間に行われた実態調査によると、渋滞緩和に対して一定の効果がみられました。


しかしこの対策にはジレンマが存在します。つまり、構造的制約によって純度の高いファスナー合流を実現しようとすると、場合によっては危険性が増すというちょっと困った副作用も起きてしまうのです。

今回は、その辺りについて考えてみたいと思います。

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ではまず、ファスナー合流とは何かというところから。

ファスナー合流とは

一言でいえば、「合流時に一番奥の地点で一台ずつ合流すること」です。

「ファスナー合流」は別名「ジッパー合流」とも言われ、基本的な意味は、ファスナーやジッパーのように「一台ずつ交互に合流すること」です。渋滞時の交通マナーとしては、そこに、「一番奥の地点で」という条件が加わることが一般的です。

なぜなら、そうした合流地点を誘導する条件が無いと、どうしても好き勝手な地点から合流する車が現れ、複数の合流地点が発生することになるからです。そうなると全体としてみたら「一台ずつ交互に」とはなりません。

■ 関連記事
ファスナー合流については、次の記事でより詳しく解説しています。


一宮JCTでの「ファスナー合流大作戦」とは

NEXCO中日本名古屋支社が、渋滞を緩和すために一宮JCTでとった ファスナー大作戦 とは、以下のようなものです。

内容

合流車線(加速車線)の先の方までラバーポール区間を延伸することで、合流区間を物理的に制限し、「ファスナー合流」をしやすくしました。

一宮JCT合流部の概要
こうすることで、長い合流区間のいろんなところで合流が発生することが抑制されます。

実態調査結果

対策後、年末年始を含む2か月にわたって実態調査が行われ、次のような結果が得られました。

  • 渋滞による損失時間 約28%減少
  • 平均通過時間(名神側)13分→10分 と短縮
  • 平均通過時間(東海北陸側)10分 で変わらず

東海北陸自動車道側で「変わらず」というのがちょっと??ですが(これまで有利だったのがよりイーブンになるので多少悪化しそうな気がする)・・・

ともあれ、一定の効果はあったということで、今後はこうした対策を他のJCTやサービスエリアでの合流などでも展開していくとのことです。


ラバーポール延伸のデメリット

しかし、この構造的対策には次のようなジレンマが存在します。

渋滞していない時の副作用

合流区間が短くなるので、車が流れている時、合流が難しくなる。

→ 特に初心者にとってキビシイ

という欠点・デメリットがあるのです。

流れている(渋滞していない)時の合流では、本線側の車の流れに合わて、タイミングを見計らってスムーズに合流することが重要となります。

たしかに、ラバーポールの区間は、壁で区切られてるのと違って見通しは良いので、合流のタイミングを見計らいやすいかもしれません。でも、実際に合流できる区間が短くなることにより、やはり合流しにくくなるのは否めません。

特に初心者ドライバーの方だと、なかなか合流できず、奥まで行って急ブレーキ!!なんてことも・・・最悪の場合、追突事故が発生することも考えられます。

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ラバーポールの延伸による物理的・構造的な対策には、上記のようなジレンマがあるので、純度の高いファスナー合流、つまり「先頭の一か所で一台ずつ合流する」ところまで制約できないのは、仕方がないことです。

というようなことは、もちろん事業者(Nexco中日本)もご存じなので、ラバーポールをギリギリ奥まで延伸するようなことはしていません。


しかし一方で、今回の一宮JCTでの対策を取り上げている車雑誌の記事や、ネットニュースなどの中には、その対策の内容を、

「ファスナーのように一台ずつ交互に合流する(ようになる対策)」

とか、

「合流できる場所を加速車線の先頭のみとし、規則正しく一台ずつ交互に合流しやすくなった」


などと報じているものもあります。しかしそれは少々勇み足の表現と言わざるをえません。

実際は、「350mあった合流区間が、140m短縮されて、210mとなった」 というのが正確な内容です。

ですから、「先頭だけでしか合流できない」なんてことはなく、 大作戦の対策後でも、210m の合流区間があり、そこで「どこでも合流」が発生し得るのです。

■ 一宮JCTでの変更点を寸法で示すと・・・

一宮JCTファスナー合流大作戦の寸法


その点、NEXCO中日本の発表では、「ファスナー合流を促し」となっていますので、妥当な表現かな思います。



しかしもし、ポールの区域を混雑度に応じて動的に動かすようなシカケ になっていたらどうでしょう・・・?

"可動式ポール"案

実は、私は対策後の年末、実際に一宮JCTを通る機会がありました。

この大作戦の概要はニュースで知っていたので、ひょっとしたらポールが可動式になってるんじゃないかとちょっぴり期待してたんですよ。

しかし残念ながら、やはりポールは固定されてました。


その時の私の妄想は、次のようなモノでした。

渋滞時には合流部を短くし、
非渋滞時には合流部を長くする。


具体的には、
  • 電車のホームのゲートのように、横方向に動く
  • 通過する車にとっては気づかないくらい、ゆっくりと動作
  • 動かす際にはパトライト等で警告。
  • 全自動ではなく、細心の注意をはらって人間が監視して操作。

これが実現できたら、世界的に見てもかなり画期的な対策になるんじゃないでしょうか。


・・・でも、いろいろな安全対策が必要でしょうから、やっぱり難しいかな。

本当のファスナー合流を実現するために

というわけで、今回の一宮JCTでのハード面での対策は、それだけで車一台ずつ交互となる「真のファスナー合流」に直結するようなものではありません

必要以上に長すぎた従来の合流区間を見直し、3分の2に縮め、「どこでも合流」を抑制した、というのが実際のところです。

とはいえ、
今回のようなファスナー合流を指向した渋滞対策は、高速道路としては初めての試みだそうで、その意味は大きいと思います。実際、数字としても効果が表れているわけだし。



大作戦のハード面の対策によって、必要以上に長すぎた合流区間はある程度まで制限されました。その先、残された210mにおいて、好き勝手な位置から合流するのではなく、規則正しい一台ずつの本当のファスナー合流を実現するためには、やはり

ドライバーひとりひとりにファスナー合流の合理性を理解してもらうこと

が重要だと考えます。

NEXCO中日本の、ファスナー合流を訴えるツイッターも結構反響があったようです。そういった意味で、この大作戦は「大成功」だったと評価したいと思います。



今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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