Pocket



読書感想文って、難しいですよね。 

にゃー
読書感想文って、意味わかんない!
率直な感想っていったって、「面白かった」とか「すごいと思いました」だけで終わっちゃって、それ以上何を書いたら良いの?

パンダ
そうそう。それに元から読書嫌いだし、課題図書なんて興味が1ミリもわかないからマジ読む気にならないんだけど


といった感じで、読書感想文に対して苦手意識をお持ちの方がほとんどかと思います。

私も子供の頃は大の苦手でした。早く済ませれば良いものを、夏休みの終わりギリギリまでひきずって、結局やっつけで原稿用紙を埋めてたクチですから、その気持ちはよくわかります。

読書感想文が書けない
子供の頃、なぜ書けなかったのか。なぜモチベーションが上がらなかったのか・・・。今であれば、その根本的原因がわかるような気がします。

それは、読書感想文を書く目的が分かっていなかったから だと思います。

そして、「感想」を書こうとしたからです。



そこで本記事では、

  • 読書感想文の目的は何か?
  • 何をどう書いたら良いの? 
  • すぐれた感想文と駄文の違いは?

ということについて取り上げてみたいと思います。

テンプレとか例文といった特効薬的なものはありませんが、感想文に対するあなたの見方が変わる、そんなきっかけになるかもしれません。

最後までお読みいただき、今年の感想文はガチで目的から考えてみませんか?



スポンサーリンク

読書感想文の目的は?

私は以下のようにとらえています。

・読書感想文の目的とは、
次の3つの要素からなる「学習方法」を習得すること
  1. インプット(本を読む)
  2. プロセス(考える)
  3. アウトプット(筋の通った正しい日本語で表現する)


・読書感想文を書くということは、
そのための 「演習」


そもそも、こうした「学習方法」を習得する意義は何でしょう?

本を読むことは勉強の基本。広い意味で知的活動の基礎となるものですから、仕事や生涯学習など、今後の人生で必要不可欠なものです。

それに、社会人になれば、報告書や提案書やレポートなど、文章を書く機会はイヤと言うほど降ってきます。そんな時には参考資料を読解し、考察し、人にわかってもらうための文章を書く力は最も重要なスキルになるのではないでしょうか。

特にAIがどんどん普及していくこれからの社会では、人間ならではのこうした力がますます重要になっていくはずです。

そうした力を身に着けるため、読書感想文を書くという課題はとても有効なものだと思います。

* * *

では、「習得すべき学習方法」に含まれる3つの要素について詳しく考えてみたいと思います。

1.インプット(本を読む)

本は発見の宝庫
新しい何かを学ぶには、それまで自分が知らなかった物事をインプットする必要があります。

学ぶために本を読むということ

現在は、様々な情報メディアがありますが、特に、過去の英知から何かを学ぼうとしたら、やはりメインになるのは「本」ではないでしょうか。

まとまりに欠けた情報を垂れ流すのではなく、書き手が一冊の形にまとめ上げ、長い時間をかけて多くの人の評価を受け、残ってきたもの(=本)にはそれなりの意味があるはずです。


もちろん、テレビやネット情報、あるいは漫画からだって何かを学ぶことは可能だし、そっちの方が面白くて簡単かもしれません。読書に限らず、何でもありの「○○感想文」という課題でも良いのかもしれません。


とはいえ、世の中、そんなに甘くありません。そんな簡単な情報ばかりじゃ視野が狭くなってしまいますし、ほしい情報を得るために難解な本を読まなければならない時だってあります。

そのため、本を読む力、つまり 読解力 を養うことも読書感想文の大きな目的のひとつになっていると思うのです。

本には色んなことが書かれている 読解力とは
文章を深く読み込んで理解する力を読解力と言います。

本には、いろんなことが書いてあります。登場人物、ストーリー、場所、時代など・・・

1回読んだだけでは気づかなかったことでも、2度目、3度目と読むうちに何かを感じることができるかもしれません。

表面的なストーリーを追うだけでなく、いろんな視点から眺めてみたり、著者の意図を推測するなどして、本に直接書かれていないことについても深く考えながら読んでみましょう。

スポンサーリンク

2.プロセス(考える)

次に、本というインプットから、感想文と言うアウトプットを得るまでの間の重要なこと。それが考えるというプロセスです。

読書感想文を書く上でのこのプロセスの意味は、本とあなたとの間でキャッチボールをして、いろいろ感じたり、何か新しいことを発見するということです。

しかし、そうは言っても、

「考えるって、何を?「感想」だから思ったことだけ書けば良いのでは?」

とおっしゃる方が多いかもしれません。

この部分がすぐれた読書感想文と凡文との最も重要な分岐点になると思います。


我々のような一般人が普通に本を読んだ時、なかなかそんなに積極的に「感想が湧き出る」こともないですよね。

ぶっちゃけ、あんまり興味が持てない課題図書を読んでも、それに対する率直な「感想」って、「面白かった」とか「すごいと思いました」だけで終わってしまうのではないでしょうか。


ほとんどの人が、本を主役として、心にもない「感想」や「感動したこと」を絞り出して、自らが脇役というか受け身のような感想文を書こうとします。そしてなんとか原稿用紙を埋める・・・こんな苦行は、苦手にならない方が無理ってもんです。


読書感想文とは、本を主役としてそのあらすじや論評を書くことではありません。

本をきっかけとして、あなた自身がどう思ったか、どんな新発見をしたか、どんな成長を得ることができたか・・・つまり、あなた自身もしくは身の回りの事をテーマとして取り上げ、それに対する自分なりの考え・意見 を書くのがポイントです。

そのためには、「考えるためのテーマ」を自分で積極的に探すことが重要です。


あなた自身の近くにあるネタが対象となれば、深い考察をすることができ、独自性の高いオリジナルな作品を書くことができるはず。それに実体験がベースとなれば事実を詳細に書けますから、原稿用紙を埋める苦労も軽くなるでしょう。なぜなら、あなたはあなた自身に対する誰にも負けない専門家だからです。


最も重要なポイントなのでもう一度書きます。

本を主役とした受け身の「感想」を書くのではなく、

あなた自身を主役として、積極的に「考えたこと」を書くのです!

本はその考えるテーマの「きっかけ」という位置づけです。


抽象的で恐縮ですが、例えば、お寺の鐘を鳴らす場面をイメージしてみてください。

鐘によっていろいろな音が出ますよね。鳴り響く鐘の音が感想文だとしたら、鐘は本ではなく、あなたです。
感想文の鐘を鳴らそう
鐘を鳴らすきっかけとなるもの、すなわち鐘突き棒が本です。それであなたという鐘を鳴らし、オリジナルな音を響かせること。これをイメージしてみてください。

鐘突き棒の種類(木材、金属など)や、突く力の加減や方向が違えば、鳴り響く音は変わるでしょう。でも、鐘の音を鳴らす主役はあくまでも鐘、すなわちあなた自身です。



あなたがこれまでに得た知識や経験、考え方や疑問に思っていることなどは、あなた独自のオリジナルなものです。

しかし、普段はその存在に気づかず、眠っているかもしれません。

本を読むことがきっかけとなって、何か心に響いたり引っかかったようなことはありませんか? 

例えば、、、

「本にこう書かれていた。そういえば、身の回りでも同じようなことがあった。私の場合は・・・」

「ここがよくわからなかった。なぜなんだろう?自分なりに考えてみた・・・」

「主人公は・・・だったけど、私なら違うんじゃないかな。なぜなら・・・」

「主役より脇役のことがすごく気になった。なぜなら僕の父に似てるから。どういうところが似ているかというと・・・」

「主人公の妹に対するやさしさに惹かれた。例えば・・・。僕にも弟がいるけど、いつも喧嘩ばかりしてる。でもこの本のおかげで弟の気持ちが少しわかった気がする。きっと・・・の時はこう思ってたのかも。これからは弟にもっと優しくしてあげたいと思う」

「桃太郎の、桃から生まれたという誕生のエピソードは、最初のインパクトはすごいけど、その後の成長や鬼退治の部分に対しては何の伏線にもなっていない気がする。もし僕がシン・モモタロウの脚本を書くとしたら・・・」

みたいな。

自分の身の回りの事に照らしつつ、深く考えながら読むことで、新しい発見をしたり、眠っている部分から大きな音が響いてくるかもしれません。


ここで、考えるテーマについて、具体的な例でいくつか掘り下げてみましょう。

ノンフィクションで、例えば「環境問題」を扱っているような本を題材として選んだとします。

その場合は、やはり「環境問題」がテーマの柱になると思うのですが、そこで環境問題に対する一般論をについて正面から論じても、オリジナリティのある読書感想文にはならないでしょう。

もちろん、環境問題を専攻する研究者だったら、独自の研究という確固たるものがあるので、オリジナリティのある文章が書けるでしょう。でも専門家ではない私たちにとっては、そのような文章を書くことは困難だからです。

どこかからコピペしてきた立派な文章で背伸びして書いても、結局は他人のふんどしで相撲をとるようなもの。薄っぺらい中身になってしまいます。

やはり、環境問題という大きなテーマの中で、自分自身の身の回りでの「問い」や「発見」を見つけることによって、オリジナルな自分の考えが表現しやすくなります。

例えば、「ゴミを分別して捨てるのは面倒だけど、規則だから仕方ないと思っていた。でもこの本で理由が理解できた。そこで積極的に考えることができるようになり、家族で話し合ってこんなことに気を付けるようにした」とか。

少し前に、ある中学生が「走れメロス」を読んで、独自の視点で考察した論文が話題になったことがあります。

「実際にどれくらいのスピードで走ったのか」というテーマで、作品中の描写から移動速度を推察した結果、ほとんど歩きじゃん!と論破したものです。

このテーマを考えたきっかけは、メロスの走るスピードを具体的に知りたかったという、まさに個人的な興味が湧きあがったのでしょう。

オリジナリティあふれる考察が見事で、とても面白いと思いました。

あれは自由研究だったかもしれませんが、読書感想文としてもとても秀悦なものだと思います。

もし、あなたが日頃から読書家で、独自の「読書論」というものを持っていて、それがあなたという個性の一部だ!とするならば、本について書くこと(つまり書評)も「アリ」なのかもしれません。

とはいえ、その場合でも、主役はやはり「あなた自身」です。つまり、本を対象とした「あなた独自のオリジナルな書評」でなければならないと思います。

よく巻末に掲載されているような、プロが書いた書評をそのまま書き写したり、言葉尻を変えてリライトしただけのようなものは、すぐにバレますからやめておいた方が身のためですよ。

課題図書が与えられた場合ですと、どうしても関心が持てずに、「つまらない本だった」的なことしか書けない・・・という人もいるかもしれませんね。

その場合でも、単なるそうしたネガティブな感想だけでなく、どうしてそう思うのか、自分が作家ならどう書きたいかなど、深く考えるというプロセスは必要になると思います。

一般的に、本について否定的な内容を書くと、先生からの評価はあまり宜しくないことが多い、ということだけは忠告させてくださいね。

本そのものに対して関心が持てないからと安易に見下したりシャットアウトするより、何かしら学ぶところを見つけようという謙虚な姿勢で取り組んだ方がベターだと思います。

本をきっかけとして、自分の中で考えるテーマを見つける努力をしてみましょう。


スポンサーリンク

3.アウトプット(筋の通った正しい日本語で表現すること)

最終的に、考えることによって得られた「答え」や「新しい発見」を形にしていきます。つまり読書感想文としてアウトプットします。

アウトプットを学ぶということには、大きく二つの意味があります。

① 自分の考えを深めてまとめること
② 自分の考えが他人に正しく伝わる文章を書くこと

読書する犬

① 自分の考えを深めてまとめること

読書感想文に限らず、作文や手紙なんかでも、いざ文章を書こうとすると難しいものですよね。

なぜ書けないのか・・・

自分には文章力がないからだ、で片付けていませんか?

もしもっと語彙力やうまい表現の仕方を知っていれば上手にかけるのに・・・とかね。


でも、たいていの場合、書けない原因はそうしたことではなく、

  • 書きたい内容が無い、薄い
  • 書きたいことがまとまっていない。

という段階で手が停まってしまう場合がほとんどではないでしょうか。あなたはいかがですか?

前者は、前の段階の「インプット」と「考えるプロセス」の部分の検討が十分でないということですね。まあ、これは時間を掛けてじっくり取り組めば、なんとかなるでしょう。

難しいのは後者。こちらは、書きたい題材があっても(多過ぎる場合も特に)、自分の中でまとまっていなければ、人に伝わるわかりやすい文章が書けないということです。偉そうに書いてますが、私も苦手です…(汗)


これを克服するには、訓練、すなわち、脳の筋トレが必要 です。

「脳の筋トレ」とは?

わかりやすい文章にするために重要な能力とは次の二つ。
  • 取捨選択すること
  • 関連性をはっきりさせること

この二つの能力には、高度な思考プロセスが必要です。そしてそれは何度も繰り返し行うことで、少しづつ向上させることができます。

何でもかんでも書けば良いわけではありません。まとまりのないことをだらだら書いても、焦点がぼけてしまいます。無駄な文章は避け、簡潔な文章にするべきです。そのためには、何が重要で、何が重要でないかをはっきりさせることが重要です。


また、関連性をはっきりさせるとは、考えを整理するということに他なりません。

書きたい内容とは、最初は断片的な「思いつき」にすぎません。それをリストアップし、相互の関係性を考え、文章としての前後関係(すなわち、文章の構成)を検討します。つまり、単なる「思いつきの羅列」を熟成し、「論理の流れ」へと進化させるのです。



このように、文章を書くには、書きたいネタを探すこととともに、自分の考えを深めてまとめることも求められます。

最初のうちは、紙の上であーだこーだ検討する必要があるかもしれませんが、こうした訓練を積み重ねることで、自分の頭の中だけで済ませられる部分が増えていきます。

文章力のある人とは、こうしたことに慣れている人なんじゃないでしょうか。

② 自分の考えが他人に正しく伝わる文章を書くこと

書きたい内容があって、それが整理され、まとまってくれば、あとは手をうごかすのみです。

この段階で、「感想文の書き方」として方法論を学ぶこともよいでしょう。構成のしかた、書き出しのテクニックなど、形にする上ではなにかと参考になるでしょう。


しかし、あまり小手先のテクニックにこだわり過ぎるのもどうかと思います。他人が用意した「テクニック」に合わせようとあまりに気にしすぎると、手が停まってしまう原因にもなりますから。


ある程度まで検討したら、細かい部分は後回し。とにかく、下書きとして文章にしていきます。ぐいぐいと自分の言葉で


下書きができればゴール目前。何度も読み返し、ブラッシュアップしていけば良いのです。

文章というアウトプットにより、自分の考えを他人に分かり易く伝えるというコミュニケーション力を付けることも感想文の目的の一つです。

家族や友達に聞いてもらって、ここはこうした方が分かり易いとか、意見を求めるのも良いでしょう。

自分ではわかりやすいと思って書いた文章でも、人にはうまく伝わらないなんてこと、よくありますよね。独りよがりにならないためには、第三者の意見もとても重要です。

ありがちだけど的外れな感想文

以上の目的がわかれば、よくありがちな

本のあらすじを書いて、ところどころに「面白かった」、「びっくりした」、「すごいと思いました」という「感想」をさしはさむような”感想文”

は、小学生低学年ならともかく、的外れであるということがよく分かると思います。

本をインプットとしている点、原稿用紙を埋めるというアウトプットについては行われているものの、本の読み込みが表面的ですし、何かを学んだり発見するといった、考えるというプロセスがありません。

たしかに、あらすじを書くという部分では、要約するというスキルを必要とします。これはこれで重要なものですが、読書感想文で一番に求められるのはそのような頭の使い方ではありません。

読書感想文として最も求められるのは、本を糧として、自分自身で何かを学ぼうとする 頭の使い方、プロセスです。

このプロセスを経ることによって、あなたにしか書けない、オリジナリティが光る読書感想文になります。

あらすじは所詮、元ネタである本の二番煎じですから、オリジナリティは出せません。

入賞作品に学ぼう

読書感想文というと、どうしてもワンパターンの書き方しか思い浮かばない!ということであれば、優れた例文をたくさん読んでみるのもおススメです。

入賞作品を読むと、確かに「すばらしいな」と思うでしょう。一方で、「とても私には書けない」と思うかもしれません。

しかし、こうした優れたものを例文としてシャワーのように浴びることで、いわゆる「コツ」というような何かを肌で感じとることができるのではないでしょうか。

よろしければ次の記事を参考にしてみてください。



この関連記事でも紹介していますが、例文の宝庫ともいえるような本もあります。


『考える読書』といって、毎年刊行されています。最もメジャーな青少年読書感想文全国コンクールの入賞作品をまとめたものです。

こうした優れた例文を見ていると、いわゆる
① あらすじ
② 感じたこと
③ わかったこと
みたいな、「感想文の書き方」として指南されている定型のものはほとんどありません。

それぞれがとても独創的で、心が動かされます。

とにかく、一度読んでみることをお勧めします。

おわりに

まとめます。
■ 読書感想文の目的とは、
  1. インプット
  2. 考える
  3. アウトプット
という学習方法を習得する事であり、


■ 読書感想文を書くのは、
そのための 演習


■ 独自の視点で深い考察をするには、
主役は本ではなく、自分自身。
本をきっかけとして、身の回りの中からテーマを見つけよう!


インプット・考える・アウトプット という学習方法を身に付けられれば、将来において、あなたの武器・財産になるはずです。

特に、AIがもっと広がるこれからの時代、こうした力はますます重要になっていくことでしょう。



いかがでしたか? 
本記事で、読書感想文が苦手なあなたの背中を少しでも押すことができたなら幸いです。


今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!


スポンサーリンク

Pocket