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子供たちが通っていた小学校で、全校でタイムカプセルを埋設するイベントが行われました。私も実行役員として検討段階から参加させて頂きました。

このタイムカプセルが開封される「約束の日」は、10年後、それとも20年後?・・・いいえ、なんと30年後!

その長い年月にも耐えるよう、しっかりした容器を使い、適切な場所に埋め、それがちゃんと伝承されるような仕組みを残しました。

今回は、この時に検討した、失敗しない(はずの)本物のタイムカプセルの作り方と埋め方をご紹介いたします。とくに防水対策は重要ですから詳しくご説明しますよ!

ちなみに「本物」というのは、「ガチで地中に何十年も埋める」という意味です。

expo-70 time capsule
卒業記念などでタイムカプセルのイベントを計画されているPTA役員さんや先生方、特に予算が少なくてタイムカプセルを自作しようと考えていらっしゃる方にぜひご覧いただければと思います。

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今回のタイムカプセル容器の紹介

何年間も地中に入れておくということは、思いのほか過酷な環境です。お菓子の缶にいれてビニール袋で包んでおく程度では間違いなく水没してしまいます。

防水性が甘くて浸水してしまうのと、気密性が甘くて湿気が入り、温度差により内部で結露するためです。

容器については、水および湿気の侵入を如何に防ぐかが最大の課題となります。

高いお金をかけられるのであれば、専門の業者さんが作った立派なタイムカプセルを購入するのもよいでしょう。

そういうものはさすがに作りがしっかりしていて、何十年も地中に埋めることができるとうたわれています。でもとっても高価なんですよね。

コストも現実的な大きな課題です。学校の行事だとそんな予算はなかなか確保できないですよね。


我々もあまり予算がありませんでしたから、タイムカプセルの容器は自作することにしました。

かかった費用

製作費用は 約41,000円 でした。

内訳は以下の通りです。

  • 二つのドラム缶の間の充填剤(猫砂):約4,000円
  • 内側のドラム缶(ステンレス製):約25,000円
  • 外側のドラム缶(プラスチック製):約11,000円
  • コーキング剤:約1,000円

ドラム缶は、中古品を探せばもっと安くできたかもしれません。

構成

構成は ドラム缶による2重構造です。

ドラム缶の隙間には猫砂を充填しました。

なんで猫砂?と思われるかもしれませんね。

では、構成物について詳しくご説明していきましょう。まずはこの謎の猫砂から・・・

二つのドラム缶の間の充填剤(猫砂)

タイムカプセル制作の最重要課題は水没対策です。その課題を解決する第一のポイントがドラム缶の間に充填した 猫砂 です。


猫砂とは、皆さんご存知の通り、猫のトイレに撒いておく砂のことです。

使われている成分にもいろんなタイプがありますが、今回使用したのは主成分が ベントナイト系 のもの。




なぜ猫砂を使うの?

猫砂って、水分(猫の尿)を吸着し、コロコロの固形になりますね。水分は内側に封じ込められ、表面まで水分が浸透してくることがありません。つまり水分をシャットアウトしてくれます。

ベントナイトとは粘土の一種です。水分をよく吸収しますが、それにより膨張して近傍の隙間を埋めるのと同時に、粘土状の飽和状態となり、それ以上の水分の浸透を防いでくれます。これって、タイムカプセルの防水性にもってこいの性質なんですね。


万博のタイムカプセルでも使用

expo-70 time capsule 1970年の大阪万博で埋められたタイムカプセルをご存知でしょうか。計画では5000年後に開封されることになっています。我々の30年とはまさにケタ違いのタイムカプセルです。

この万博のタイムカプセルでも、実は同様の目的でベントナイトが使われているんですね。

これ以上のお墨付きはないんじゃないでしょうか。


安全性

石鹸や食品分野(ワイン等の濁り除去)でも使用されるなど、基本的に安全性が高い物質です。微粒子の状態では、肺に吸い込んだりする可能性があり、体に良くないとされていますが。



で、そんな優れものの素材ですが、要するにどこにでもある猫砂です。ホームセンター等で8リットル袋が500円程度で売られていますので、今回の場合は余分も含めて四千円以下で調達できました。



内側ドラム缶

これが心臓部。多少コストはかかりますが、耐食性に優れたステンレス製を採用しました。

見栄えもよいので、埋設前の体育館でのセレモニーではこれを使って児童たちによる封入の儀式を行いました。

大切な埋蔵品は何重ものビニール袋で包まれ、この中に格納されています。



実際に使用した内側ドラム缶は、容量60リットルで、約25,000円でした。素材としては、SUS304という最もポピュラーなステンレスで、板厚は1.2mmです。

開口部が広いオープンドラム(上部の面がフタとなってパッカーンと開くタイプ)です。

フタの取り付け部分はボルトバンドタイプです。パチンと簡単に留められるレバータイプよりも、ボルトでしっかりと締め付けることができます。バンドももちろんステンレス製です。ここらへんも防水対策上のポイントです。


外側ドラム缶

内側ドラム缶およびその周りを囲む猫砂を格納するシェルという役割です。コストを考慮し、プラスチック製としました。お金があればステンレスが良かったんですけどね。

実際に使用したものは、110リットルで、11,000円でした。



外側ドラム缶もオープンドラムのボルトバンドタイプです。バンドはやはりステンレス製。

本体は高密度ポリエチレンというプラスチックです。購入先によると、この材料の地下埋め用の通常パイプですと50年以上の寿命があるとのことです。



内側ドラム缶が外側ドラム缶の中にすっぽり入るよう、内径および開口部のサイズをよく確認しておく必要があります。

容量的に 外側ドラム > 内側ドラム だとしても、形状の問題で入らないこともあり得えますので。



コーキング剤

ドラム缶自体の防水性能は、本体そのものというよりは、本体とフタとの接合部が重要であるといえます。

接合部から水分が侵入してしまうと、いくら本体に十分な防水性があっても意味がありません。

ドラム缶のフタにはもともとシリコンのガスケット(平たく言えばパッキンのことです)が付属しているのですが、業者さんが言うには、防水の耐久性という意味では、ガスケットを使うのはベストな選択ではないとのことでした。

ガスケットの代わりに使うものとして、業者さんがおすすめしてたのは

市販の変成シリコーンによるコーキングを充填する


という方法でした。確かに、同じシリコンでも、出来合いのガスケットを使うよりコーキング剤の方が密着性が良くなりそうです。

変成シリコーンのコーキング剤そのものは30年近くもつとのことです(ホームセンターなどで普通に購入できます)。

* * * *

さて、このように防水性を重視した構造のタイムカプセルなんですが、実は埋め方にも防水性を高める重要なポイントがあります。次をご覧ください。

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埋め方

いよいよ、タイムカプセルを地中に埋めます。このまま、普通にフタを上にした形で埋めてしまいがちですが、「本物」はちょっと違います。

上下さかさまに!?

重要なポイントです。

外側ドラム缶は上下さかさまにして埋める


下の図をご覧ください。左側の図は外側ドラム缶を普通に置いた場合、右側は外側ドラム缶を上下さかさまに置いた場合を示します(クリックで拡大します)。

外側ドラム缶は上下逆

充填材である猫砂は時間がたつにつれて、詰まって、容積が減ってくると思われます。そうすると、外側のドラム缶が普通の置き方(フタが上)になっていると、フタと猫砂の間に空間が空いてしまいます。

何らかの原因によりフタのシーリングが破れた場合、ドラム缶の中に水が侵入してしまいます。猫砂が水をストップしてくれることを期待しますが、内部に水が溜まる状態は好ましくありません。

一方、外側のドラム缶が上下さかさまですと、フタと猫砂の間には隙間がない状態になります。フタのシーリングが破れてしまった場合でも、猫砂のブロックがすぐに効くので、水が入ってくる恐れは極力小さくなるでしょう。

さらに、水の侵入箇所(フタのシーリングが破れた所)から内側ドラム缶のフタまでの、猫砂による防水距離が長いので、しっかり水をブロックしてくれるでしょう。

埋める手順

埋める手順は以下のようになります。
埋める手順

全体を吊るせるようなワイヤーなどを付けておくと、埋めるとき、および引き上げるときに役立ちます。

また、下の写真で、穴を横切って斜め方向に地面より一段低くしてあるところがありますが、ここに単管パイプを水平にして埋めました。30年後、タイムカプセルを探すとき、深く掘らなくても埋めた場所がわかるように。ワイヤーを掛けておけば、その意図は伝わるでしょう。


男性役員が交代でけっこう深く掘りました

その他の手作り容器

私たちの場合は全校レベルの取り組みだったので、容量を確保することを優先しました。一方、埋蔵物が少ないケースであれば、以下のような容器もおすすめです。

  • 塩ビの水道管
  • 金属の水道管


いずれも、パイプの両側のねじのところにシールテープを貼り、フタをしっかりとねじ止めします。

塩ビの水道管はなんといっても安価です。耐久性については金属の方が優れていそうですね。

ドラム缶と比べると容量的に制約がありますが、安価だし、防水・耐久性という面ではこちらも良さそうに思います。

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埋めないという選択肢

我々のタイムカプセルは地中に埋めましたが、埋めない方法もあります。

たとえば倉庫の一角をタイムカプセル置き場として、約束の日がくるまでそこに置いておけばよいわけです。

卒業記念であれば、担任の先生にあずかってもらうというやり方もあります。

また、残すものを手紙やはがきに限定するとすれば、
タイムカプセル郵便
なんてサービスもあります。


保存状態はこうした方法の方が良好かもしれないですが、人の手の届くところにあるということは、逆に何かの間違いで捨てられるとか、紛失する可能性も皆無ではありません。

そういった意味では、地中に埋めた方が間違いが無いとも言えます。もちろん、容器の防水・耐久性があること、埋めた場所を間違いなく覚えていて掘り返せることが前提ですけどね。

それよりなにより、イベントとして考えても、埋めて掘り出す方が絶対盛り上がると思うんです。

やはり、地下から掘り出す本物のタイムカプセルの方がロマンがあると思いませんか?

終わりに

今回のタイムカプセルの防水対策のポイントをまとめます。

  • ドラム缶の2重構造とし、間に猫砂を充填
  • ドラム缶のふたはボルトバンドタイプベルトでキッチリ締める
  • ガスケットより変性シリコーンのコーキングがおすすめ
  • 外側ドラム缶は上下逆さまにすること


残念ながら、この方法が本当に失敗しないとは実証されておりません。いまさら何を言ってる!と怒られそうですが。それに一部のポイントは実施できておりません。例えば外部のドラム缶を逆にするのは重要なポイントなんですが、残念ながら埋蔵後で思いつきました。。。

結論がでるのは30年後です。

それにしても何人の役員が開封に立ち会えるんだろ。
約束の日を元気に迎えることを目標に、日々自転車通勤などをして健康管理に気を付けています。

その時までこのブログが続いていましたら、ぜひ結果をご報告したいと思います。
ご期待ください。


今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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