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この記事を書いている時期(1月)には年末年始やら成人式を含む三連休があって、高速道路を使って遠出をする人も多いと思います。

高速道路って、いったん走り始めれば信号もないし、運転は一般道よりラクだと思いますが、運転初心者の方にとっては、やはり合流は難しいようですね。

インターチェンジで一般道から入ってくるところ、またはサービスエリアやパーキングエリアから本線へ合流するときなど、とても緊張してしまうそうです。私も昔そうでした。

今回はこのような合流の場面のうち、特に 渋滞時の合理的な合流方法 について取り上げます。ファスナー合流あるいはジッパー合流あるいはチャック合流とも呼ばれるものです。

趣旨としましては、初心者の方へのアドバイスというよりは、みんなの共有財産である道路を公平・効率的に使いましょうという話のつもりですので、初心者の方だけでなくベテランの方にもお読みいただければ幸いです。


合流のキーポイントは本線の交通量によってまったく違ってくる

安全確認や譲り合いの精神についてはどのケースでも重要であることは言うまでもありませんが、注意すべきキーポイントについては、スムーズに流れている時と、本線が渋滞している時とではまったく異なります。

  • スムーズに流れている時:”いかにうまく加速して本線の流れに乗るか”

  • 渋滞している時:”ファスナー合流”

今回の記事で焦点を当てるのは後者についてです。

なお、典型的な合流の例として、高速道路での本線への合流を取り上げますが、車線減少などによる合流等、一般道でもまったく同じです。

ファスナー合流とは?

さて、渋滞時の合流方法のキーポイントであるファスナー合流とは何でしょうか?

簡単に言うと、

車線が減少する先頭(いちばん奥)で
一台づつ交互に合流する

ということです。まさにジッパー、ファスナーのような合流です。

渋滞している路線に合流する時にはこのファスナー合流をしましょうという話です。

なぜなら、合流する方、合流される方ともwin-winな、合理的な方法だからです。


なお、狭義のといいますか、「ファスナー合流」という言葉そのものは、「車が一台づつ交互に合流する」ということを表します。しかし渋滞時の合流方法のマナーとして考える際には、

  • 車線を有効利用すること
  • 不公平が生じないように合流ポイントが確定しやすいこと

といった合理性が肝要と思いますので、「車線が減少する先頭(いちばん奥)で」という条件も必要となってきます。

本記事では、特に断らない限り、この条件も含めて「ファスナー合流」と表現させていただきます。


そうは言っても、ファスナー合流を実践するドライバーはまだ少数


合流可能な部分はいわゆる加速ゾーン(高速以外では「合流ゾーン」ですかね)であって、一定の長さが確保されているのですが、その最初や途中の部分で合流する人が多いです。(われ先に合流しようとしているので、以下、こちらの合流方法を便宜上「我先合流」とします)

この図で、Aの地点で合流しようとするのがファスナー合流で、そこより手前、Bの地点までのどこかで合流しようとするのが我先合流です。

我先合流をする人が多いのは、次のようなドライバー心理があるからでしょう。

マナー違反なんじゃないの?

Bの地点から合流する人の目には、Aの地点まで進む車は「横をすり抜けて先まで進んで合流しようとするズルイ車。マナー違反だ」と映るのではないでしょうか。

渋滞している高速道路でたまに見かける光景として、路側帯(緊急車両以外の車には通行が許されていない)をスイスイとすり抜けていく車がいますよね。これは法律違反であり、全くの不届き者です。

しかしこの図のように、通行が認められた加速ゾーンを走行してAの地点まで行くことは、この不届き者とは似て非なるもので、何ら問題がありません。

「法律的には問題なくてもやっぱズルいよ!私は絶対やらない」という潔い心理は嫌いじゃないですけどね。。。

早めに合流しておかないと不安

「どんづまりの先頭までに本線に入れてもらえなかったら、どうしよう」という不安から、周りに迷惑かけたくない、できるだけ早めに合流してしまいたいという心理がはたらきます。運転経験の浅い方ほどこのように思われる方が多いのではないでしょうか。

かくいう私にもはるか昔、初心者マークの頃がありましたから、そうした気持ちはよくわかります。

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我先合流とファスナー合流の比較

以上のような心理は理解できます。ですが我先合流は以下のような弊害があります。

  • 車線の台数バランスを崩し、本線側の渋滞を悪化させる
  • 順番の前後関係が乱れる

このことを次の図(クリックで拡大します)で表わしてみたいと思います。


時間軸は左から右へ流れています。青の車列が本線で、そこへ赤の車列が合流しようとしています。

まず、一番左側の図。の位置でわれ先に合流しようとします。

次に、後続ののクルマがその横を追い越してさらに先の地点から合流します。

その後、一番右側の図にかけて、本線の青い車の前に脇からどんどん赤い車が流入してきて、本線の青い車は何度もブレーキを踏み続けることになります。

赤い車にしても前後関係が乱れて、は最初に合流したのに後続のに抜かれてしまいます。

青のが入ってくる頃には赤の方はすでにまで参戦済みという状態です。

これは極端な例かも知れませんが、本線の渋滞を悪化させ、順番の前後関係が乱れることはお分かりいただけるかと思います。


これって、まさに 本線が行列で並んでいるときに、自分が最初に列に入れてもらった上でクサビとなり、本線行列を留め置いて、後から来た知り合いを「こっちこっちー」と自分の前にどんどん割り込みさせているような状況 に思えませんか?

つまり、我先に合流してしまうことで、自分の前方に「知り合い」がオーバーラップして割り込める余地を残してしまうことが問題です。


一方、ファスナー合流の方は以下のようにシンプルです。基本的にオーバーラップは発生しません。赤と青のクルマが一台ずつ、進入してきた順番で整然と合流していきます。


注意すべきこと

このように合理的なファスナー合流ですが、注意すべき点がふたつあります。

第一に、最初にも述べましたように、ファスナー合流は渋滞時限定です。

本線が流れている時も一台交互で合流できればよいですが、車間距離もスピードも様々ですので、加速ゾーンを有効に使って適切なタイミングでうまく流れに乗ることの方が重要です。


第二に、ファスナー合流をよく知らない人がまだ多く、ファスナー合流をしようとして奥まで進んで合流してくる車のことを「ズルイ奴」とか「マナー違反」と認識してわざと譲らない人が少なからずいるということです。

ファスナー合流で合流したい方としては、一台交互を期待したいところですが、譲ってもらえない場合は仕方がありません。本線の車両が優先ですから次を待ちましょう。

本線が流れている場合の合流では加速ゾーンで止まってしまうのはNGですが、幸い、渋滞しているのなら止まって待機しても大丈夫です。

そして、譲ってもらって合流できたら、ハザードランプを点滅させるなどして感謝の気持ちを伝えましょう。



しかし、以下のようなケースではちょっと迷います。
  1. 高速道路で出口渋滞している場合 ⇒ 奥まで進んでから出口渋滞に合流してよいの?
  2. 車線減少ではなく導流帯のみがある場合 ⇒ 合流のために停まって待つと合流しない車に対して迷惑では?

2.の例:右折専用レーンの手前に導流帯がある

これらについては、応用編の記事で掘り下げて考えています。よろしければこちらもご覧ください。

奥でのファスナー合流が定着していない地方のドライバーは愚かか

渋滞時には、合流する方、合流される方にとっても合理的なファスナー合流なのですが、なかなか日本では定着していません。

以前、長期の海外赴任から帰国した職場の先輩の車に同乗したとき、先輩が「日本人は車線の使い方がヘタだ」とぼやいていました。

その時はその言葉の意味がよく分からずスルーしたのですが、おそらく道路が有効に使われていないという意味だったのでしょう。つまり、みんな我先合流をして、減少車線の前方がガラガラで、合流される車線の渋滞がずっと長く伸びている状況を指していたんじゃないかと思います。

渋滞
自動車先進国であるドイツなどでは「ジッパー法」なる法律にもなっていて、そうした標識があるところでは交互に合流しないと違反ということになります。実際に渋滞解消という効果が得られているそうです。

首都高あたりでは、昔と比べて結構ファスナー合流を実践する車が増えてきたように感じます。この先もっと周知が進めば、徐々に定着していくのではないでしょうか。

一方で、地方では早めに合流してしまうのが当たり前になっているところも少なくないようです。みんなで整然と早い地点で"ファスナー合流"していきます。ごくたまにその横をすり抜けて奥までいって合流しようものなら、本線側の車も意地でもブロックする・・・なんてことも。

さて、奥でのファスナー合流をしていない地方のドライバーはドイツや首都高のドライバーと比べて愚かなのでしょうか?未熟なんでしょうか?
私は違うと思います。

確かに道路の有効利用という面では効率は悪いかもしれません。しかし、早めの地点でもちゃんと一台交互が保たれて、”ファスナー合流”されているなら、つまり、オーバーラップするような車がほとんどいなければ、それはそれで公平で秩序のとれた流れになるのではないでしょうか。

逆の見方をすれば、そのような美徳といいますか倫理観を共有できなくなった時、「奥で」という一種の強制力みたいなものを働かせる必要がでてくるんだとも思えます。

手前の地点でも秩序の保たれたファスナー合流ができている「純」な社会と、奥まで行かないと公平性が保たれない「俗」な社会(「多様」な社会、とも言える)、どっちが良いんでしょう?って話です。

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【追記】ついに高速道路でも「ファスナー合流大作戦」!!

2019年暮れより、Nexco中日本が愛知県の一宮JCTで「ファスナー合流大作戦」という渋滞対策を実施しているのをご存じでしょうか?

合流地点のラバーポールの位置を伸ばすことによってファスナー合流を促す狙いで、実際に渋滞緩和効果が表れています。

とうとう、日本でもこうなってきたんですね。ここをきっかけに、全国でもファスナー合流の観点で合流箇所の見直しを進めて頂きたいものです。


しかし、この対策にはジレンマが存在し、場合によっては副作用もあり得ます。その解決方法について以下の記事で考えてみました。

■ 関連記事
> 一宮JCTのファスナー合流大作戦!渋滞緩和に有効だがジレンマも


終わりに

自分勝手な位置で我先合流をすることで、結果的に自分も損をしますし、本線側の車にとっても大迷惑になります。オーバーラップする支線側の後続車のみが「得」をすることになります。

私もこのようにファスナー合流(ジッパー合流)を唱える以上、こうした場面では「奥まで進む」という選択をします。

とはいえ、無理なオーバーラップなどはしません。前車が我先合流を完了して進路がクリアになったら、渋滞している本線側の車を横目でみながら粛々と一番奥まで行って合流します。「ズルイ奴だと見られてるかもな」と心苦しいのですが敢えてそうしています。

「得をしたい」というよりは、「本線側の車への仁義として、一点で合流するために、自分の後続車によるオーバーラップを許さず、奥のどん詰まりまでブロックする」という意識です。

「ファスナー合流しようぜ」というデモンストレーションでもあります。だからルームミラー越しに後続車が我先合流をしてしまっているのを見ると正直がっかりします。

本線を走行の皆様、どん詰まりでは意地悪せず、合流させてもらえるとありがたいです。



今回は以上です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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